
ハーゲンダッツの新作「玉露(ぎょくろ)」味で話題!高級茶「玉露」っていったい何?普通のお茶との違い
はじめに
今月22日、ハーゲンダッツから新作の「玉露」味が発売されるとのこと。
皆さんも「玉露ってどんなお茶?」「普通のお茶と何が違うの?」と気になっているのではないでしょうか。
実はこの世に『玉露』を誕生させたのは、山本山六代目、山本嘉兵衛徳翁です。甘露のごとく玉のような茶葉から『玉露』と命名しました。
今回は、玉露の生みの親、山本山が皆様に「玉露」の奥深い世界をご紹介します。
玉露はなぜ高級?独特の栽培方法に秘密
玉露は、数ある緑茶の中でも最高級品として知られています。
しかしながら、使用する茶葉の種類や製法が普通煎茶と大きく異なるわけではありません。
実際、最も一般的な「やぶきた」をはじめ、「ごこう」や「さみどり」、「さえみどり」といった様々な品種が玉露として栽培されています。摘み取られた後の製法自体も、煎茶と同じ流れを辿ります。
では、一体何が玉露を特別な存在にしているのでしょうか?
その答えは、チャノキの栽培方法にあります。
一般的な煎茶が太陽の光をたっぷりと浴びて育つ「露天栽培」であるのに対し、玉露は「被覆栽培(ひふくさいばい)」という独特の方法で育てられます。
これは、新芽が開き始めた頃に、茶園全体を藁や寒冷紗(黒い布)で覆い、約20日間もの間、日光を遮って栽培するというものです。
この被覆期間は、玉露の品質を左右する非常に重要な要素です。
期間が長すぎると新芽が十分に伸びず、茶樹が弱ってしまうため、毎日茶葉の成長を細かく見極め、最適なタイミングで被覆を行う、まさに職人の絶妙な判断が求められます。
もちろん、覆いは一度かけたら終わり、というわけではありません。
例えば、被覆の初期は遮光率を50%程度に抑え、茶葉の生育状況を確認しながら徐々にその比率を98%まで高めていくなど、各茶園では長年の経験に基づいた手間暇を惜しまない管理が行われています。
この緻密な被覆栽培こそが、玉露特有の深い旨みとまろやかな甘み、そして独特の「覆い香」を生み出す鍵となるのです。

光を遮ることで生まれる奇跡の味わい
被覆栽培の最大の目的は、日光を遮ることで茶葉の成分を変化させることにあります。
通常、日光を浴びると生成される渋み成分の「カテキン」が抑制され、代わりに旨み成分である「テアニン」が豊富に蓄積されます。
このテアニンこそが、玉露特有のまろやかで濃厚な旨みと甘みの源となり、アオノリのような独特の「覆い香(おおいか)」と呼ばれる香りを生み出すのです。
玉露の名の由来と熟成の技
「玉露」という美しい名は、江戸の老舗茶商「山本山」の六代目、山本嘉兵衛が製茶中に、茶葉がまるで露のように丸く炙られていた様子から名付けられたと言われています。
一部の生産地では、収穫した茶葉を蔵の中で数カ月間寝かせて熟成させることもあります。これにより、覆い香がさらに引き立ち、旨みが茶葉全体に行き渡った、極上の味わいに仕上がるのです。
最高の味わいを引き出す淹れ方
また、その淹れ方も他の緑茶と大きく異なります。
普通煎茶の場合、80℃程度のやや高めの温度で淹れることで、香り立ちが良くなり、ほどよい渋みと旨みのバランスが楽しめます。
しかし、玉露に同じ高温のお湯を注いでしまうと、玉露特有の旨み成分であるテアニンが十分に抽出される前に、苦み成分のカテキンが多く溶け出してしまいます。
これでは、せっかくの玉露のまろやかな味わいが損なわれ、渋みが強く出てしまうのです。
玉露を美味しく淹れるコツは、50℃から60℃程度の低温のお湯で、2分半から3分ほど時間をかけてじっくりと抽出することです。
この温度帯で淹れることで、テアニンが効率よく溶け出し、玉露ならではの深い旨みと、とろけるような甘みを存分に引き出すことができます。
また、玉露を淹れる際には、通常の急須とは異なる、宝瓶(ほうひん)と呼ばれる丸みを帯びた急須を使うのが一般的です。
玉露は50~60℃の低温で淹れるのがコツですが、宝瓶は直接手に持っても熱くなく、適温を肌で感じられます。また、平たい形状は茶葉を均一に広げ、旨み成分のテアニンを効率良く抽出することができます。
玉露の栄養成分と健康効果
玉露には、心身のバランスを優しく整える二つの主要な成分が豊富に含まれています。
その一つが、アミノ酸の一種であるテアニンです。
このテアニンは、深いリラックス効果やストレス軽減効果をもたらすことが数々の研究で明らかになっています。実際、その効果の高さから、睡眠の質を改善するためのサプリメントにも配合されるほどです。
さらに、テアニンにはストレスホルモンの分泌を抑制し、血圧の上昇を穏やかにする効果も報告されています。
もう一つの重要な成分はカフェインです。
玉露はカフェインも非常に豊富に含んでおり、その量は一般的な煎茶の約8倍、レギュラーコーヒーの約3倍近くにもなります。
このことから、玉露は「日本古来のエナジードリンク」とも称されるほどです。朝の目覚めの一杯としても最適で、起床時の疲労感や眠気が気になる方には特におすすめできます。
このように玉露は、テアニンがもたらす心地よいリラックス効果と、カフェインによる明瞭な覚醒効果を同時に享受できる、まさに理想的なお茶です。
この唯一無二のバランスは、まさに「緊張を和らげつつも集中力を高めたい」という現代人の複雑なニーズにぴったりです。
例えば、重要なプレゼンや面接、試験前など、心穏やかにかつ最高のパフォーマンスを発揮したい場面で、玉露はきっと心強い味方となるでしょう。
さいごに
玉露は、栽培と製法に手間と時間を要するため、限られた産地でしか生産されない希少な高級茶です。
ハーゲンダッツをきっかけに玉露に興味を持たれた方は、ぜひ玉露の元祖である山本山で、本物の玉露の奥深い世界を味わってみてください。
アイスとはまた異なる、特別な一杯の感動を体験できるはずです。