太陽の恵みを受けて育つ!鹿児島茶の魅力
はじめに
日本で一番早く新茶ができる、全国で第二位の生産量を誇る鹿児島県。
知覧や頴娃(えい)、霧島南麓の茶産地が知られており、「走り新茶」は日本一早い新茶として4月上旬から出荷が始まります。
水色は鮮やかな緑色で、すっきりと飲みやすいお茶が多いのが特徴です。
温暖な気候と肥沃な土壌に恵まれた鹿児島県は、古くから茶栽培が盛んで、独特の風味と歴史を持つお茶を生産しています。
鹿児島茶の歴史
鹿児島県における茶栽培の起源は、鎌倉時代初期に平家の落人が阿多白川(南さつま市)にもたらしたという説や、足利時代に吉松(湧水町)の般若寺に宇治から茶種子を取り寄せたという説など、諸説があります。
江戸時代には薩摩藩が茶の栽培を奨励し、藩内各地で栽培されるようになりました。
当時の主な産地は阿久根から吉松にかけての鹿児島県北部地域が中心であり、主として田んぼの畔(あぜ)や屋敷の生け垣で栽培されました。
江戸時代後期に編纂された薩摩藩の地誌『三国名勝図会』には阿久根、吉松、都城に産するものが名品とされている記述が残っています。
明治以降は、茶業振興策が講じられ、鹿児島茶は全国的な銘茶として広く知られるようになりました。
特に、第二次世界大戦後は、援助食糧の見返り物資に茶の輸出が再開され、鹿児島茶は世界にもその名を広めました。
多品種の生産が盛んな鹿児島県
お茶の生産量全国第二位の鹿児島県には、シラス台地のなだらかな地形を活かした大規模な茶園が県内全域に広がっています。
そのほとんどが平たん地で、どの茶園でも日光をふんだんに浴びることができること、また年間を通して温暖な気候であることを活かし、早生から晩生種まで多くの品種を栽培しています。
県北部では日本茶の代表品種・やぶきたが多いですが、南九州市や志布志市などの南の地域では、ゆたかみどりやさえみどり、朝露といった品種のほうが盛んに栽培されています。
全国で唯一、四番茶まで収穫
鹿児島県では早くから機械化を取り入れ作業を効率化したことで、一番茶から四番茶、秋冬番茶まで年に5回も収穫できるようになり、生産量を伸ばしました。
茶の摘採は4月上旬頃より県南部から始まり、県北部や山間地へと進んでいきます。
収穫時期が早いため、四番茶まで続き、10月になると秋冬番茶が摘まれます。
一部の茶園が実施している、3月末から収穫可能な「走り新茶」も、日本一早い新茶として大変人気があります。
濃厚でふくよかな味わいが特徴
多様な品種から作り出される鹿児島茶ですが、総じて濃厚な旨味とコクが特徴です。
この深い味わいの理由は、摘採前の被覆と深蒸し製法にあります。
鹿児島茶は、摘採前に黒色の資材で被覆(カブセ)することで、渋みを抑え甘味成分のテアニンの増加を促します。これにより、甘みと渋みの調和がとれた、濃厚でコクのある風味ができあがるのです。
また、県全体としては深蒸し煎茶を中心に製造しています。普通煎茶の蒸し時間は30秒~40秒ですが、「深蒸し煎茶」はその倍の60秒~80秒ほど蒸します。これにより渋みが少なくまろやかなコクが生まれるのです。
まとめ
鹿児島茶の魅力は、その栽培品種の多様性にあります。
温暖な気候と肥沃な土壌を活かし、一般的な「やぶきた」に加えて「ゆたかみどり」や「あさつゆ」など、多種多様な品種が栽培されています。
全国的には茶葉の品種でお茶を選ぶことはあまりできませんが、鹿児島県では緑茶を品種で選ぶという、他の県にはない楽しみ方ができます。
それぞれの茶葉が持つ個性を楽しむことができるのも、鹿児島茶の魅力の一つです。