旨みを最大限に引き出す!玉露の淹れ方を『玉露』の元祖、山本山が解説
はじめに
日本茶の最高峰と言われる玉露。
その魅力は、とろりとした甘みと濃厚なうまみ、そして眼前に磯の景色が広がるような豊かな香りにあります。
そんな玉露は他の日本茶に比べて淹れ方も味も少し独特です。
少量かつ40-60℃の低温のお湯でじっくりと入れることで、その良さを存分に引き出すことができます。
一煎あたりの一人分の量はわずか10cc程度です。口の中に淹れたら舌の上で転がしたり、空気を含みながら、独特の覆い香やとろんとしたまろやかな舌触りを味わいます。
玉露は三煎目まで楽しむことができますので、徐々に温度を上げながら二煎、三煎と、味の変化を楽しみましょう。
玉露を上手に淹れるポイント
他のお茶と異なり、玉露は淹れ方にも繊細さが必要となります。
ポイント①分量は正確に
最大のポイントは茶葉の量とお湯の分量を正確に測ること。
玉露は他の日本茶に比べて茶葉に対してお湯の量が少ないので、茶葉もしくはお湯の量を誤ると、玉露のうまさを引き出せないだけでなく、水分がすべて茶葉に吸収されてしまい、お茶が抽出できないということになりかねません。
ポイント②温度調節が大切
また、お湯の温度についても、きちんと調整が必要です。
玉露は、一煎目は40℃、二煎目は50℃、三煎目は60℃、というように徐々にお湯の温度を高くしながらその香りや味わいの変化を楽しむものです。
美味しい玉露を楽しむためにも、温度計を用意して、お湯の温度にはこだわってみてください。
煎茶に比べるとはるかに玉露は高価なため、茶葉の量を控えめにしてしまう方も多いのですが、適量を守ってこそ、玉露の魅力を最大限引き出すことができます。
浸出後の茶葉はポン酢などをかけて食べても楽しむことができますので、惜しまずに適量を守るようにしましょう。
玉露の淹れ方
【用意するもの】
- 急須(100cc程度のもの)
- 茶碗(小ぶりの茶器が望ましい)
- ティースプーン
- タイマー
- 温度計
- 計り
- 湯冷まし用の器
【材料と道具(3人分 約50cc)】
- 茶葉:8グラム
- お湯:50cc
- 温度:40℃(一煎目)、50℃(二煎目)、60℃(三煎目)
- 浸出時間:2-2.5分
※三人分からが入れやすいです。4-5杯分を淹れる場合は茶葉10g、お湯70-80ccが目安
【淹れる手順】
1. 計りで茶葉の量を図る
可能ならばデジタル式の計りで茶葉の量を計りましょう。計りがご自宅にない場合は、ティースプーンを用いて目分量を計りましょう。
ティースプーン擦切り一杯はおおよそ茶葉の2グラムにあたります。そのため、玉露茶3人分(茶葉8グラム)を淹れる際の茶葉は、ティースプーン4杯分となります。
ただし、茶葉によって一杯当たりのグラムはわずかに違いがあることに加え、何杯も入れることで少しずつ誤差が出てくる点は覚えておいてください。
2.ポットから湯冷ましにお湯を注いで、50グラムを計量する。
少々面倒に思えるかもしれませんが、熱湯を直接急須に入れるのではなく、まずは湯冷まし(湯冷ましの道具は茶碗などでOKです。)に移し替えて、お湯を冷ますとともに、お湯の量を測りましょう。
ご自宅に計りがない場合ですが、紙コップがあれば計量カップの代用ができます。
一般的なサイズの紙コップは満杯で200ml入る物が多いです。そのため、紙コップのおおよそ1/4の量を目安にしてください。
また、調理器具のおたまでも代用できます。おたまの大きさには規定はなく製品により違いはありますが、大体50mlの物が多いようです。
3.お湯の温度を下げる。
まずは湯冷ましに入れた熱湯を、急須に注ぎます。これをさらに茶碗に注ぎ、再び湯冷ましに移し替えます。
ポット(90℃程度)→湯冷まし(82℃程度)→急須(75℃程度)→茶碗(67℃程度)→湯冷まし(60℃)→そのまま1、2分待つことで、急須に戻したタイミングで一煎目の適温である40℃になる計算です。温度計があれば温度計で測れるとなおよいでしょう。
4.急須に軽量した茶葉を淹れる。
急須に残った余分なお湯を捨ててから、準備しておいた茶葉8グラムを淹れます。
5.40℃まで冷ましたお湯を急須に注ぎ、蓋をする
湯冷ましを繰り返し適温になったお湯を急須に戻し、蓋をします。
6.タイマーで二分計って浸出させる。
急須の蓋をした状態で、茶葉を2-2.5分蒸らしましょう。玉露の濃厚な旨みと甘味を存分に浸出させます。
※併せて、二煎目がすぐに楽しめるように、このタイミングで湯冷ましには二煎目用のお湯を入れておくようにするとよいでしょう。二煎目のお湯の温度は50℃程度と、一煎目より少し高めにします。
7.濃さと量が均一になるように回し注ぎをする。
注ぎ方は煎茶同様です。お茶の美味しさが凝縮している、最後の一滴まで注ぎきりましょう。
二煎目、三煎目を楽しむには
小ぶりな急須に茶葉を淹れて、ぬるいお湯を少量注いで浸出させる玉露。
一煎目を入れている間に二煎目を、同様に二煎目を入れている間に、三煎目のお湯の用意をする、というように先回りをして準備しておくことが大切です。
二煎目のお湯の温度を少し高くするのは、一煎目である程度成分が出てしまっているためです。
三煎目は80℃以上のお湯(熱湯でもOK)で抽出すると、香ばしさやほろ苦さが出て、玉露のもう一つの魅力であるキリっとした味も楽しめます。
さいごに
いかがでしたか。
初めて玉露を飲む方は「本当にこれってお茶なの?」と皆さん驚かれます。
まるで和食の出汁を思わせるかのようなコクと旨み、そしてとろりとした口当たりは、多くの方が抱いている「緑茶」のイメージを覆すものであり、まさに新たな日本茶の世界への入り口といえるでしょう。
また、被覆栽培により生まれる覆い香と呼ばれる、のりのような香りには、これまで体験したことのない発見や感動があるはずです。
慣れ親しんだお茶とは印象が異なる玉露ですが、その繊細な香りと甘み、まろやかな味わいは、一度味わえば忘れられないものとなります。淹れ方は少々手間がかかりますが、特別な日に、ゆっくりと時間をかけて玉露を味わってみてはいかがでしょうか。