食後の一杯、なぜ?食事の後にお茶を飲む習慣を歴史的背景から紐解く
はじめに
食事の後に茶を飲む習慣は、世界共通の文化と言えるほど身近なものです。
しかし、なぜ私たちは食事の後にわざわざお茶を飲むのでしょうか?
単なる習慣として片付けるには、あまりにも深く根付いたこの行為。
その背景には、どのような理由や意味が隠されているのでしょうか?
今回は、食後の一服がもたらす効果や、その歴史的な背景を紐解きながら、この習慣の奥深さを探求していきます。
お茶の薬効
第一に考えられる理由の一つは、消化促進作用をはじめとするお茶のあらゆる効果でしょう。
昔からお茶には薬効があるといわれ、事実、薬の代わりとしても用いられてきました。
今のように技術が発展していない中でも、血糖値の上昇を抑えたり、消化を促進したり、虫歯を予防したりなどというお茶の効果を経験的に知っていたために、食後にお茶を飲む習慣ができたのかもしれません。
実際に、お茶に含まれるカテキンは、糖の吸収を抑え、食後の血糖値の急上昇を防ぐ働きがあるため、糖尿病予防に役立つ可能性があります。
そのほかにも、消化酵素の活性化や腸内環境の改善、胃液分泌の促進など、様々な作用があります。
これにより、食物の消化を促進し、腸内環境を整える効果も期待できます。
さらに、お茶の持つ強力な抗菌作用は、口の中に残った食べカスや細菌を洗い流し、口臭の原因となる細菌の繁殖を抑える効果も期待できます。
食事の後の油っぽさや重さを軽減し、口の中をさっぱりとさせて虫歯予防にも役立ちます。
禅の食事作法
「お茶を食後に飲む」という習慣は、禅寺という独特の文化から生まれたという説もあります。
遣唐使や留学僧によって日本に伝えられた茶は、寺院、特に禅寺で広く普及しました。
禅寺では、食事からお茶を飲む作法に至るまで、僧侶の生活が細かく定められており、「食後には必ずお茶を飲む」という規則がありました。
この寺院における厳格な作法が、やがて庶民の間にも広がり、今日まで続く「食後の一服」の習慣へと発展したとも考えられています。
戦国武将の習慣
さらに、武士の習慣も理由の一つとして考えられます。
宴席の後、武将たちは宴会の最後に必ず自分の椀に白湯を入れて、そこに残っていた食べ物を入れて食べ、最後にもう一度白湯をお椀に注ぎ、それを飲んでいたといいます。こうすることでお椀を綺麗にしていました。
実のところ、このような風習が生まれた背景ははっきりとは分かっておりません。
食事の最後を白湯で締めくくることを一種の儀式として捉えていたのか、もしくはいつ命を落とすかもわからない日々の中で食事に対する感謝の気持ちを表していたのか、など考えられる可能性としてはいくつかあります。
しかしながら、いずれにせよ、当時は現在のようにすぐにお湯が沸かせる時代ではありませんでした。
食事の後にあたたかい白湯を飲むという時間は、心温まるひとときだったのではないでしょうか。
その後、白湯がお茶に変わり、これが食事の後のお茶という習慣として庶民の間にも広まったとも推測されています。
さいごに
いかがでしたか。今も世界各地でみられる「食後のお茶」。
昔の人々が、食事の後に茶を飲んでいたのには、カテキンが持つ具体的な作用のほか、禅や武士の習慣、食事への感謝といった、歴史的背景や心の持ち方がありました。
現代においても、食後に茶を飲む習慣は、そうした先人の知恵と心を引き継いでいると言えるでしょう。
忙しい現代社会において、食事の後にゆっくりと茶を味わう時間は、自分自身と向き合う貴重な時間となるはずです。