抹茶のすべてがわかる!歴史や製法のほか、巷にあふれる抹茶スイーツの秘密までを徹底解説
はじめに
抹茶は、緑茶の一種で、茶葉を石臼で細かく挽いた粉末状にしたものです。
通常の緑茶が茶葉を湯通しして飲むのに対し、抹茶は茶葉をまるごと摂取できる点が特徴です。
カテキンやテアニンはもちろん、水に溶けにくいB-カロテンやビタミンE、食物繊維などの栄養を余すことなくすべて取り込むことができるので、最近の健康ブームと相まって、とても注目されています。
抹茶の製法
この抹茶は、原料となる碾茶を石臼で挽いたものです。
まず摘み取った茶葉を蒸す点は煎茶や玉露と同じですが、その後は揉むのではなく乾燥させます。散茶機という茶葉同士がくっつかないように風を送る機械で、茶葉を高く舞い上げ、冷却を繰り返します。
最後に、碾茶炉で乾燥させた後、石臼で1~20μmの微粒子に挽かれます。
碾茶の栽培方法は玉露と似ていますが、覆う期間が玉露より5日程度長く、より旨味が凝縮されます。
抹茶の歴史
当初は禅寺や武家社会を中心に広まりをみせた「抹茶」。千利休らの活躍により、室町時代中期以降、抹茶を点てて振る舞う茶道「茶の湯」が確立され、江戸時代には広く庶民に広まりました。
実はいろいろ、抹茶の風味
抹茶を湯で溶かすと、茶葉の表面積が広がり、豊かな香りが立ち、まろやかな味わいが楽しめるとされています。
抹茶の風味は、収穫時期や製法によって異なります。
一般的には、11月に収穫された碾茶を挽いた抹茶が、まろやかな味わいと香りが特徴です。
しかし、近年では、5月の新茶をすぐに挽いた、爽やかな香りの抹茶も人気を集めています。
世界中で人気が高まる抹茶
抹茶は今や世界中で人気を集め、健康食品としても注目されています。
日本の緑茶輸出額は、2023年度に過去最高の219億円を記録するなど、この10年で飛躍的な伸びを見せています。
この輸出を牽引しているのは、主に抹茶を主体とした粉末状の緑茶で、2023年には緑茶全体の輸出量の約6割を占めるまでに成長しました。
国内においても、抹茶を使ったスイーツなどが数多く登場し、私たちの生活に深く根付いています。
しかし、こうした抹茶ブームの裏側で、私たちが日常的に口にする抹茶の多くは、伝統的な製法で作られた本物の抹茶とは異なるものであることをご存じでしょうか。
巷にあふれる抹茶スイーツの秘密
本来の抹茶は、茶葉を丁寧に蒸して乾燥させ、石臼でじっくりと挽いて作られます。
日光を遮って栽培された茶葉を使用し、手間ひまをかけて作られるため、高品質で風味豊かなものが特徴です。
しかし、このような伝統的な製法で作られた抹茶は、年間の生産量が約1300トンと、全体の約3分の1に過ぎません。
一方、年間約4000トン※と言われる抹茶の生産量の多くは、粉砕機などで茶葉を粗く砕いた「加工用抹茶」と呼ばれるものです。
この加工用抹茶は、日光を遮る栽培をしていない茶葉が使われます。
抹茶原料の「碾茶」の代用とされる「モガ」や9-10月に製造される番茶からできた「秋碾」を原料とする場合がほとんどで、品質や風味は本来の抹茶とは大きく異なります。
加工用抹茶は、抹茶アイスや抹茶クッキーなどの食品に広く利用されています。
これらの製品は、安価に大量生産できるため、私たちにとって身近な存在となっています。
しかし、本来の抹茶の風味や栄養価とは異なることを理解しておくことが大切です。
もし、本物の抹茶の風味を味わいたいのであれば、専門店で販売されている高品質な抹茶を選ぶことをおすすめします。
※参考:全国茶生産団体連合会『令和5年茶種別生産実績』
抹茶と加工用抹茶の比較
- | 飲用の抹茶 | 加工用の抹茶 |
材料 | 抹茶用に育てられた一番茶や二番茶 | 左記以外の、一般の茶畑で秋に穫れる茶葉 |
製造法 | 乾燥させて、石臼で挽く | 乾燥させて粉砕機にかける |
粒 | 不揃い(1-100μm) | ほぼ均等(1-20μm) |
色 | 鮮やかな緑色 | くすんだ緑色 |
香り | 複雑で甘く、奥深い | 単純で浅め |
飲み物にした場合 | 旨みや甘みが強く、口当たりがよい | お湯と合わせただけでは渋みが強く、砂糖や牛乳などと合わせなければ、非常に飲みづらい |