お茶の香りの秘密!その香りを生み出す成分とは?
はじめに
お茶には500以上の香り成分が含まれており、それらが複雑に組み合わさることで、私たちが感じる独特の香りが生まれます。
これらの香り成分について、そのすべてが解明されているわけではありませんが、これまでに多くの研究が行われ、お茶の香りについて少しずつ明らかになってきました。
2種類ある香気成分
これらの香気成分は、大きく分けて”天然の香気成分”と”加熱によって生成される香気成分”の2つに分類できます。
香り成分① 天然の香気成分
天然の香り成分は、茶葉の中に元々含まれている成分です。
生葉に多く含まれる「青葉アルコール」は、新緑のような爽やかな香りを生み出し、この成分やそのエステル化合物が新茶の香りに貢献しているといわれています。
お茶の製造時に生葉を蒸すと、本来の青臭い香りが適度にやわらぎ、若い芽のような香りになります。
また、同様に天然成分である「リナロール」や「ゲラニオール」といった成分は、花のような甘い香りを加え、お茶に華やかさを添えます。これらの成分の種類や量は、茶葉の種類や品種によって異なります。
香り成分② 生成される香気成分
加熱によって生成される香り成分も、お茶の香りに重要な役割を果たします。
製茶過程で茶葉を加熱すると、様々な化学反応が起こり、新たな香気成分が生成されます。「ピラジン類」は、加熱によって生じる香ばしい香りの主成分で、煎茶やほうじ茶などの香ばしさを特徴づけています。
品種により異なる香り成分
この2種類の香りの成分バランスがとれているお茶が、一般的に「香りが良い」とされていますが、お茶の種類によって、これらの香り成分のバランスは大きく異なります。
たとえば。緑茶は、青葉アルコールなどの天然の香気成分が多く、爽やかな香りが特徴です。一方、紅茶や烏龍茶は、発酵によって新たな香気成分が生成され、フルーツのような甘い香りや、花の香りが特徴的です。
製法の違いが与える影響
また、製茶の方法も、お茶の香りに大きな影響を与えます。
例えば、蒸らし時間が短い煎茶は、青葉アルコールなどの揮発性の高い成分が多く残っており、爽やかな香りが特徴です。一方、蒸らし時間が長い深蒸し茶は、これらの成分が少なくなり、まろやかな香りが特徴です。
栽培方法と香り成分
お茶の種類や製法だけでなく、栽培方法もお茶の香りに影響を与えます。
玉露や煎茶には、良質の青のりのような深みのある香り成分の「ジメチルスルフィド」が多く含まれています。この香りは、チャの木に覆いをかけて栽培することで生まれるもので、「覆い香」と呼ばれています。
釜炒り茶には「釜香」という特有の香りがありますが、その実態は明らかになっていませんが、煎茶に比べて、加熱により生じる香ばしい香りであるピラジン類が多く含まれています。
煎茶や下級の煎茶を焙煎したほうじ茶も、香ばしい香りのピラジン類を豊富に含みます。
さいごに
いかがでしたか。
お茶の清々しい香りは、未知の香り成分も含め膨大な数の香り成分が複雑に絡み合って生み出されているのです。
お茶の香りに関する研究は、まだ途上ですが、今後も様々な発見が期待されます。 お茶の香りを深く探求することで、お茶の楽しみ方はさらに広がることでしょう。
茶の香りと主な化合物
若葉の爽やかな香り | 青葉アルコールやそのエステル類 |
スズラン様の軽く爽やかな花香 | リナロール |
バラ様のあたたかい花香 | ゲラニオール、フェネチルアルコール |
ジャスミン、クチナシ様の甘く重厚な花香 | ジャスミン、メチルジャスモネート、ヨノン類 |
果実、桃様、乾果様の香り | ジャスミンラクトン、その他ラクトン類 |
木質系の匂い | 4-ビニフェノール、セスキテルベンインドール |
青苦く、重い香り | インドール |
青海苔様の匂い | ジメチルスルフィド |
加熱により生じる香ばしい香り | ピラジン類、フラン類 |
保存中に増加する古茶臭 | 2.4-ヘプタジエナールなど |