一杯の緑茶ができるまで|四季を通じた茶園の取り組み
はじめに
チャノキを育て始めてから収穫できるまで平均して4年ほどかかるのですが、ようやく収穫できるようになってからも、茶園の一年間は大忙しです。
茶園は、四季を通じて様々な表情を見せ、茶農家のたゆまぬ手入れによって美味しいお茶が生まれています。
ここでは、茶園の一年を通して行われる主な作業や、その時期に見られる特徴的な風景などを詳しくご紹介します。
春(2-5月):芽出しと一番茶の収穫
冬から休眠状態だったお茶の木は、春になって暖かい日が続くと成長が活発になり、新芽を付けます。
その約2週間後に新茶が開き始め、4-5枚開いたところで摘採(収穫)します。このときが茶農家にとって最も忙しい時期です。
茶園の主な作業
- 肥料:チャノキに与える肥料は、茶葉の品質を左右する重要な要素です。長い冬を乗り越えた茶畑に、窒素、リン酸、カリウムをバランスよく含んだ無機肥料や、酒粕や魚粉などを原料にした有機肥料などをバランスよく与えることで、土壌にしっかりと栄養補給を行います。
- 整枝:冬の寒さに頑張って耐えてくれた古い葉っぱの表面を、軽く刈り落とし、新茶の収穫時に古い葉が混入することを防ぎます。また、春に表面の葉を落とすと芽数が減ることから、芽の勢いが良くなるといわれています。
- 防霜:新芽は、温度がマイナス二度以下になると枯れてしまうため、春先は「晩霜」対策が必須となります。防霜対策として、今日では防霜ファンで上空の暖かい空気を吹き降ろす方法が一般的です。
- 一番茶萌芽: 暖かい日差しとともに、茶の木に新しい芽が吹き出し始めます。この芽出しの時期は、茶農家にとって一年で最も忙しい時期の一つです。
- 一番茶生育:新芽が次々に伸び、茶葉が成長する時期です。
- 一番茶の摘採: 一般的に4月下旬から一番茶の収穫を開始します。立春を起算日として88日目にあたる八十八夜のころから、摘採が本格化します。
夏(5-8月):二番茶・三番茶の収穫と茶園の管理
一番茶の摘採から一カ月半ほどすると、新しい元気な新芽が目立つようになります。これが二番茶になります。
その約1カ月後には三番茶としばらく収穫時期が続きます。暑さがピークのこの時期は、雑草や害虫も多く、茶園の手入れ・管理にも力が入ります。
茶園の主な作業
- 整枝・剪枝:遅れ芽の除去や新芽の生育を揃えて、摘採時に古葉や木茎の混入防止を目的に整枝をおこないます。
- 追肥: 夏の成長期には、定期的に追肥を行い、茶の木の生育を促します。
- 二番茶・三番茶の萌芽:二番茶は、一番茶摘採から15日後くらいで、三番茶は二番茶摘採から約2週間から1ヶ月程度で萌芽が起こります。
- 二番茶・三番茶の生育:気温が高い夏場に生長するため平均開葉日数は短期間に推移して、一番茶よりも摘採適期が短くなります。なお、高温多湿な環境では生育が早く、涼しい地域では生育が遅れる傾向があります。
- 二番茶・三番茶の摘採: 一番茶の収穫後、45~50日ほどで茶の木は再び新芽を出し、摘採されます。おおよそ6月下旬~7月上旬にあたります。
- 茶園の管理: 夏は高温多湿のため、病害虫が発生しやすい時期です。発生する害虫は地域の気候・風土によって異なりますが、茶園の巡回のほか薬剤の散布など、病害虫の発生を抑制します。
秋(8-11月):茶園の整理と来年に向けた準備
以降も何回か摘採されますが、秋になり涼しくなってくると成長が落ち、冬になると休眠します。
それにともない、秋には整枝を行います。これは茶畝の表面を刈って整える作業で、翌年の一番茶収穫の際に古い葉などが混ざらないようにします。そのほか、茶畑の畝の間を耕し、根が水や栄養を吸収しやすいようにいたわってやります。
茶園の主な作業
- 三番茶の摘採:二番茶の収穫後、35~40日後の7月下旬から8月上旬に三番茶の摘採が可能となります。さらにその1ヶ月後の9月下旬に四番茶を摘採する茶園もあります。
- 茶園の整理: 収穫を終えた茶園では、古い葉を落とし、来年の成長に備えて茶園を整理します。
- 秋肥: 秋には、翌年の芽出しに備えて秋肥を施します。
- 越冬準備: 寒さに備え、茶園に覆いをかけるなど、越冬準備を行います。
- 整枝:秋までに伸びた茶園の枝や葉を切断し、来年の春に出てくる一番茶の芽を均一に揃える作業です。次の年に取れる芽の数をコントロールし、品質や収量などにかかわる重要な作業となります。
冬(11-2月):休眠期と来年の準備
茶の木は冬の間、生長を停止し休眠期に入ります。厳しい寒さから身を守るため、葉を落とし、春に向けた養分を蓄えます。
茶園の主な作業
- 剪定: 冬は、茶の木の樹形を整えるための剪定作業が行われます。不要な枝を切除し、翌年の新芽の生長を促します。枝が増えすぎると新芽や枝がやせて品質が低下してしまうのです。そのほか、摘採しやすい高さに保つ狙いもあります。
- 施肥: 春の芽出しに向けて、肥料を施します。
- 敷き草:土の乾燥を防ぐために、茶畝に草を敷きます。草は次第に分解されて有機肥料にもなります。
茶園の四季折々の風景
チャノキは常緑性の広葉樹です。そのため、一年間を通して葉っぱが付いています。とはいえ、一年を通してずっと同じ緑色をしている訳ではありません。以下では、茶園の四季折々の風景をご紹介します。
- 春: 新緑が芽吹き、茶園全体が若葉色に染まります。黄みがかった緑色の茶葉は非常に柔らかく、薄さがあります。
- 夏: 茶葉の緑が深まり、茶園は一面の緑の絨毯のようになります。みずみずしく表面はつややかです。
- 秋: 茶葉の色が少しずつ濃く、深緑色に変わります。茶園の場合、あまり花を咲かせないように栽培していますが、本来は秋の終わり頃から初冬にかけて白い花を下向きに咲かせます。
- 冬: 秋とは少し表情を変え、やや赤みを帯びた深緑色をしています。革質で、光沢がある硬い葉をつけています。