お茶好き必見!日本茶の主要産地・銘柄一覧を徹底解説
はじめに
全国では毎年約8万トンのお茶が生産されており、日本の食文化に深く根付いています。
生産量のトップは静岡県が長年その座を守っており、続いて鹿児島県、三重県、宮崎県、京都府が続きます。
これらの主要5県だけで、全国のお茶生産量の約3分の2を占めるという圧倒的なシェアを誇っています。
お茶の銘柄は、その多くに産地名が冠されているのが特徴です。
この産地名は、茶葉を蒸して乾燥させた荒茶を生産する「生産地」か、その荒茶を仕上げて私たちが飲むお茶に加工する「加工地」のいずれかを表しています。つまり、Aという地域で栽培された茶葉が、Bという地域で仕上げられた場合、「B茶」という名前で販売されることもあります。
以下では、日本各地の主要な茶産地とその特徴を詳しくご紹介します。地域によって栽培される茶の種類や、その味わいは大きく異なります。ぜひ、この情報を参考に、あなたのお好みの茶葉を見つけてみてください。
日本各地の主要な茶銘柄とその特徴
1. 村上茶(新潟県)
新潟県村上市で栽培される村上茶は、雪国ならではの厳しい自然環境の中で育まれた、まろやかな甘みと深いコクが特徴の日本茶です。日本最北の地で育まれた「北限のお茶」として知られています。
厳しい冬の寒さの中でじっくりと育まれているため、甘みが強く、後味はまろやか。渋みが少なく、飲みやすいのが特徴です。
江戸時代に村上の町人が宇治や伊勢から茶の種を持ち帰り、栽培を開始したのが始まりと言われています。
2. 狭山茶(埼玉県)
埼玉県狭山地域で栽培される狭山茶は、その深いコクと上品な香りが特徴です。寒暖差が激しい気候の中で育つ狭山茶は、葉肉が厚く、旨味が凝縮されています。
また、狭山茶独自の仕上げ工程である「狭山火入れ」が、深みのある味わいを生み出しています。狭山茶は、鎌倉時代から栽培が始まったとされ、歴史が古く、宇治茶や伊勢茶と並ぶ日本三大銘茶の一つに数えられています。
「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」と言われるほど、その味が評価されています。
3. 静岡茶(静岡県)
静岡茶は、日本を代表する緑茶の一つです。鎌倉時代に中国から茶種を持ち帰り、栽培が始まったとされています。
旨味、甘み、苦味のバランスが良く、飲みやすいこと知られています。
特に、本山茶と呼ばれる品種は、その品質の高さから「天然の玉露」とも呼ばれているほど。静岡県は温暖な気候と豊富な水に恵まれ、良質な茶葉を育むのに適した環境です。江戸時代には御用茶として献上されるなど、古くから高い評価を受けてきました。
4. 宇治茶(京都府)
宇治茶は、京都府宇治市周辺で生産される日本を代表する緑茶です。鎌倉時代に中国から茶種を持ち帰り、栽培が始まったとされています。
宇治茶の特徴は、深い緑色と、旨味、甘み、苦味のバランスが良く、上品な味わいです。特に、被覆栽培と呼ばれる、茶園を覆って育てる独特の栽培方法によって、独特の風味と香りが生まれます。
宇治茶は、江戸時代には将軍家への献上品として用いられるなど、古くから高い評価を受けてきました。宇治の豊かな自然と、長い歴史の中で培われた製茶技術が、世界に誇る宇治茶を生み出しています。
5. 伊勢茶(三重県)
全国生産量第3位のお茶どころである三重。伊勢茶は、三重県で生産される日本茶の総称で、平安時代初期から栽培が始まったとされる非常に歴史が古いお茶です。
最たる特徴として、葉肉が厚く、しっかりとした味と水色が出る点が挙げられます。
南北に長い三重県では、北勢地域の「かぶせ茶」、南勢地域の「深蒸し煎茶」など、その地域の地形や気候の特色を生かしたお茶造りを行っていますが、県内で生産されたお茶は、総じて「伊勢茶」と呼ばれ、三重ブランド認定品のひとつになっています。
6. 宮崎茶(宮崎県)
年間を通しての温暖な気候と、豊富な日照時間、肥沃な土壌が、お茶の栽培に適している宮崎県。降雨量にも恵まれ、美味しいお茶作りに大変適しています。
そんな恵まれた土地で日差しをたっぷりと浴びて育った宮崎茶は、煎茶だけでなく釜炒り茶の生産も非常に盛んです。釜炒り茶は、釜で炒ったあとに、乾燥させながら成形する「精揉(せいじゅう)」という工程を行わないため、茶葉は勾玉(まがたま)のような形状になります。
また、炒ることで、独特な「釜香(かまこう)」と呼ばれる香ばしい香りが生まれ、旨味が強く、味が濃いのが特徴です。
7. 八女茶(福岡県)
福岡県八女市周辺で生産される日本茶です。
その特徴はなんといっても、グンと引き立つ甘みとうまみに加えて爽やかな香り。渋みや苦みが少なく、強い旨味が凝縮されています。
八女地域には、肥沃な土壌と豊富な地下水、最適な雨量と内陸性気候の寒暖差など、上質なお茶を栽培できる条件が揃っています。加えて山間部で発生する霧は、お茶のうまみ成分であるテアニンの生成を促進します。
山間地域を中心に煎茶と玉露を、平野部では主に煎茶の栽培が行われていますが、特に玉露は質と量ともに日本一を誇り、その品質の高さは世界的に評価されています。
8. うれしの茶(佐賀県)
嬉野茶は、佐賀県嬉野市周辺で生産される日本茶です。特徴はなんといってもその形状。茶葉が丸く玉状になっていることから「玉緑茶(グリ茶)」と呼ばれています。
この丸い形状によって、お湯を注いだ際にゆっくりと開くため、旨味が凝縮され、豊かな香りが長く楽しめるのが特徴です。
また、製法によって蒸し製と釜炒り製があり、蒸し製はさわやかな香り、釜炒り製は香ばしい香りが楽しめます。
起源は大変古く、室町時代から栽培が始まったとされています。長崎の出島を通じて海外へも輸出され、高い評価を得ていました。
9. 鹿児島茶(鹿児島県)
鹿児島県は、温暖な気候と肥沃な土壌に恵まれ、お茶の栽培に適した地域です。
南北に長い地理的な条件を活かし、昼夜の寒暖差が大きい冷涼な山麓地帯では香り高いお茶を、平坦地帯では豊かな日差しの中で有効成分が豊富なはっきりとした味のお茶を育てています。
南国の太陽をたっぷり浴びて育つため、濃厚なコクと旨味が際立っています。甘みと渋みのバランスが良く、口当たりはまろやかで後味はすっきりとしています。
10. 桃生茶(宮城)
桃生茶は、宮城県石巻市桃生町で生産される日本茶です。今から400年前、仙台藩主・伊達政宗が殖産振興で茶葉の栽培を奨励したことに始まりました。
日本最北限のお茶として誕生し、生産量は少ないのですが、その希少性も魅力の一つです。苦みが少ないため飲みやすく、ふくよかな香りとまろやかな味わいをしています。
11. 熊本茶(熊本)
九州山脈の深山渓谷や日吉地方、球磨などが有名ですが、熊本県全域で生産されています。
温暖な気候と豊かな自然に恵まれた環境で栽培され、深い味わいと香り高い風味、さっぱりとした甘みが特徴です。
主に煎茶、九州独特の蒸し製玉緑茶、釜炒り茶など、様々な品種がありますが、特に、玉緑茶は全国の生産量の1/4を占めるほどです。温暖な気候と肥沃な土壌が、茶葉に深みのあるコクと旨味を与えています。
12. 出雲茶(島根)
島根県の豊かな自然の中で育まれた、爽やかな香りと濃厚な旨味、鮮やかな水色が特徴の日本茶です。
荒茶生産量は300トン程度と少ないのですが、起源は、江戸時代にさかのぼり、松江藩主が茶道を奨励するなど、歴史は古いお茶です。
質の良さで知られる一方、生産量が少なく、希少性が高い点も出雲茶の特長です。
13. 月ヶ瀬茶(奈良)
京都府と滋賀県、三重県に渡る大和高原一帯で山間部の気候を活かして作られている月ヶ瀬茶。濃厚な味わいとすっきりとした香りが特徴です。
名張川の下流にあるミネラルを多く含んだ土壌は、美味しいお茶の栽培に適しています。煎茶のほかにかぶせ茶なども生産しており、有機栽培に取り組んでいる茶園もあります。
14. 美濃茶(岐阜)
香りと味の良さで定評がある美濃茶。岐阜県産の緑茶の総称ですが、西美濃地域の「揖斐茶」と、美濃中央地域を中心とする「白川茶」が二大銘柄として知られています。
標高の高い山間部で栽培されることが多く、昼夜の寒暖差が大きいことから、すがすがしい香りとキレのある渋みが特徴です。
15. 奥久慈茶(茨城)
太平洋側の日本茶の集散地としては最北である、茨城県大子町を中心とした地域で栽培される緑茶です。
昼夜の寒暖差が大きく、澄んだ空気の中で育つため、葉が厚く、味にコクがあり、香りが強いのが特徴です。400年以上の歴史があり、古くから伝わる手もみ茶の製法も魅力の一つです。
16. 足柄茶(神奈川)
箱根、丹沢山麓一帯で作られる足柄茶。山のお茶特有の香りがあり、うまみと渋みのバランスが取れた味わいをしています。
昼夜の寒暖差が大きいことから、旨味成分のアミノ酸が豊富で、渋みが少なく、香り高いのが特徴です。
特に浅蒸し茶が有名で、黄金色の美しい色合いと爽やかな香りが楽しめます。関東大震災の復興産業として開始しました。
17. 西尾茶(愛知)
愛知県西尾市周辺で生産される緑茶です。抹茶の元である碾茶を作っており、その生産量は全国でもトップクラス。全国の抹茶生産量の約20%を占めています。
温暖な気候と水はけの良い土壌が、抹茶栽培に最適な環境を作り出しています。西尾の抹茶は、深い緑色と上品な香り、まろやかな旨味が特徴で、コクも感じられます。
まとめ
いかがでしたか。今回は、日本全国の、煎茶の主要産地についてご紹介しました。それぞれの産地にもお茶産業が栄えた歴史的背景や土地・環境的な理由があり、それによりお茶の個性や味わいも異なっています。
普段何気なく飲んでいる煎茶ですが、産地をチェックしたうえで茶葉をチョイスすることで、ティータイムをより楽しめるようになることでしょう。