鎌倉時代から続く、日本の伝統茶「狭山茶」
はじめに
入間市を中心に、所沢市や狭山市などで生産されている狭山茶。日本三大銘茶の一つとして知られています。
狭山市の寒冷な気候と良質な土壌が育んだ狭山茶は、その豊かな香りと深い味わいが特徴です。「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめ指す」と茶造り唄で歌われるように、狭山茶はその味の良さで知られています。「狭山火入れ」という独自の製法により、甘く濃厚な味わいが楽しめます。
狭山茶の歴史
狭山茶の歴史は古く、鎌倉時代まで遡ります。慈覚大師円仁が中国から持ち帰った茶の種を、お寺の境内や畑に植えたのがはじまりとされています。その後室町時代には、 慈光寺で栽培されたことから「慈光茶」と呼ばれ、これが狭山茶の起源の一つとなりました。
以降は「河越茶(川越茶)」と呼ばれていたのですが、村野盛政らにより需要拡大が図られ、生産地が広がるに伴い、狭山茶と呼ばれるようになったといわれています。その後も、江戸という大消費地の近郊という地の利を活かし、安定的に生産を拡大し、全国的に知られるお茶となりました。
狭山茶の特徴
狭山茶の魅力はなんといっても、爽やかな渋みとこうばしさです。
このこうばしさは、「狭山火入れ」と呼ばれる独特の乾燥処理によるものです。煎茶製造の仕上げ段階で、茶葉が黄色くなるくらい強く熱を加えています。これにより、乾燥を十分に行って貯蔵性を高めるとともに、加熱香気を生成させて味や香りを向上させ、甘く濃厚な味わいに仕上げています。
また、狭山茶の茶葉は他の地域に比べて肉厚であることが知られています。
同地は茶産地としては比較的寒冷な地域のため、芽の伸びが遅く、冬の間しっかり茶樹を休ませることができます。
厳しい寒さに耐えながら、摘採までにじっくりと時間をかけて茶葉の厚さが増していくため、「狭山火入れ」のような処理にも耐えられるのです。肉厚になった葉には養分が多く含まれており、味も濃厚で甘みのあるお茶ができます。
独自の製法
大産地は栽培・製茶・流通が分業されているのが一般的ですが、狭山には小規模農園が多く、栽培、加工、販売まで生産者が一括して管理する形態(自園・自製・自販農家)をとっています。茶農家自身がすべての工程に携わることで、細部にまで気を配ることができ、より丁寧なお茶造りが可能となるのです。
また、自園で栽培から加工までを行うことから、同じ狭山茶といえど個性が豊かで、農家によってお茶の特徴が異なる点も大きな魅力です。同じ狭山茶でも、茶園それぞれのこだわりが詰まったお茶の違いを楽しむことができます。
まとめ
いかがでしたか。まろやかでコクのある濃厚な味わいが特徴の狭山茶。
自園・自製・自販農家という昔ながらの製法で作り上げており、それぞれのお茶屋さんに、代々受け継がれた製茶技術とこだわりがあります。
狭山茶の味は、各茶農家が昔ながらの伝統を受け継ぎ、生み出してきたまさに歴史の重みを感じる一杯と言えるでしょう。
口に含んだ瞬間に広がる爽やかな香りと重厚で複雑な味わいをぜひ味わってみてください。