玉露と煎茶、何が違う?栽培方法から味まで徹底解説!
はじめに
玉露と煎茶は、どちらも日本を代表する緑茶ですが、その味わいや風味は大きく異なります。この違いは、主に栽培方法の違いによって生み出されます。
玉露と煎茶の違い
玉露は、茶摘みの約3週間前から遮光して栽培されます。日光を遮ることで、茶葉は光合成を抑え、旨味成分であるテアニンを多く生成します。そのため、玉露はコクがあり、甘みが強く、独特の覆い香と呼ばれる香りが特徴です。また、渋みが少なく、まろやかな口当たりが楽しめます。
一方、煎茶は、日光をたっぷり浴びて育ちます。日光を浴びることで、茶葉はカテキンを多く生成し、爽やかな香りと程よい渋みを持ちます。玉露に比べて、よりすっきりとした味わいが特徴です。
玉露を育む「被覆栽培」とは
被覆栽培とは、茶園に遮光資材を被せ、茶葉に直接日光が当たらないようにする栽培方法です。これにより、茶葉の成分や味に変化をもたらし、高品質な茶葉を生産することができます。
色々な種類がある日本茶の中で、被覆栽培を行っているのは次の三種類。玉露、碾茶(抹茶)、かぶせ茶です。これらのお茶の木は、新芽が開き始めたころに覆いをかけて育てます。
- 玉露: 被覆期間が20日程度と長く、最も高品質な茶葉が得られます。
- てん茶: 製茶方法が異なるため、被覆期間は様々ですが、一般的に玉露と同じか少し短い程度です。
- かぶせ茶: 被覆期間が7~10日程度と短く、玉露と煎茶の中間の品質です。
被覆栽培のメリット
被覆栽培を行う最大の目的は味と質のコントロールです。
葉に含まれるうまみ成分のアミノ酸類、特にテアニンは、日光に当たると茶葉の苦味や渋みの成分であるカテキン類(タンニン)に代わってしまうのですが、遮光をすることでそれが避けられるため、うま味や甘みが強く、渋みや苦みの軽いまろやかな味になります。
一方で、カフェインは、お茶の芽が日光にあたる時間が長くなるにつれて、含有量が減っていきます。そのため、あまり日光に当たっていない若い芽を使う玉露や抹茶はカフェインが多く、きりっとした苦みがコクと深さを引き立ててくれます。
そのほかにも、光合成が抑えられることで葉緑素が分解されにくくなることから、鮮やかな緑色の茶葉となります。抹茶の鮮やかな色合いはこれが理由です。
さらに、覆いをすることで病害虫の発生が抑制されるほか、保温効果も得られるので、霜が防ぐことができます。摘採時期を早めることができることに加え、葉が固くなりにくいので摘採時期も長めに確保すとることができるのです。
被覆栽培の方法
被覆に使う材料は、黒色の寒冷紗(かんれいしゃ)やよしず(簾)、ワラなどがあります。遮光率や耐久性などを考慮し、適切な遮光資材を選択します。
碾茶や玉露は新芽が1~2枚開き始めた頃に被覆を開始します。まずは遮光率70-80%の覆いをかけ、約1週間後に95-98%に引き上げます。被覆開始から15~20日程度たってからが、摘採の時期。地域によっては、収穫した茶葉を蔵の中で数カ月寝かせ、熟成させてから出荷することもあります。そうすることで、覆い香が引き立ち、うまみが茶葉全体にいきわたった上質なお茶に仕上がるのです。
玉露と煎茶の中間のようなかぶせ茶は、玉露よりも被覆は軽く70~80%程度の遮光率が一般的です。遮光期間を7~10日程度と短くしたり、覆いを直接チャノキにかけたりして品質を調整します。
被覆栽培の歴史
被覆栽培は、日本独自の茶栽培技術として発展してきました。その歴史は古く、室町時代にはすでにその原型が見られ、その後、様々な地域で独自の工夫が加えられながら発展してきたといわれています。
被覆栽培は、決して玉露や碾茶を生み出そうとした過程で発明されたわけではなく、茶葉を寒さや暑さから守るという、自然な発想から生まれたと考えられます。
自然との共生を図りながら、より良い茶を生産したいという人々の願いが、長い歴史の中で被覆栽培を生み出したと言えるでしょう。
まとめ
被覆栽培は、茶葉の品質を向上させるための重要な栽培方法です。しかし、遮光資材の設置や撤去に手間もかかり、栽培コストが高いなどの理由から、実施できる茶園はそう多くはありません。
貴重な被覆栽培によって生産された茶葉。もし出会うことができたならば、ぜひ手に取り、その高い品質と独特の風味を味わってみてはいかがでしょうか。