緑茶の秘密!カテキンが糖尿病予防に効く理由
はじめに
近年、生活習慣病の一種である糖尿病が深刻な社会問題となっています。
そんな中、緑茶に含まれるカテキンという成分が糖尿病予防に役立つ可能性が注目されており、糖尿病予防に効果があることが科学的に証明されつつあります。
具体的には血糖値の上昇を抑えたり、インスリンの働きをサポートしたりするなど、さまざまなメカニズムで糖尿病のリスクを減らすことが期待されています。
今回は、緑茶がどのように糖尿病予防に役立つのか、そのメカニズムについて詳しく解説していきます。
糖尿病とは
糖尿病とは、血液中の糖が基準値を上回る状態が慢性的に続く生活習慣病のひとつで、放置すると様々な合併症を引き起こす恐ろしい病気です。
通常、食事を摂取すると、血糖値が上昇します。
血糖値が上昇すると、インスリンが分泌され、血糖値を正常値まで下げるように働きます。
健康な人の血糖値は、インスリンなど様々なホルモンの働きによって一定の範囲内に調節されていますが、糖尿病では、インスリンの分泌量が不足していたり、インスリンがうまく働かなかったりするため、血糖値が高くなってしまいます。
高血糖が続くと、様々な合併症を引き起こす可能性があります。
例えば神経障害、腎臓病、網膜症などが代表的な合併症で、これらは、失明や腎不全、下肢切断など、生活の質を大きく低下させる可能性があります。
糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病の大きく2つの種類があります。
1型糖尿病は、自己免疫疾患が原因でインスリンがほとんど分泌されないタイプです。
一方、2型糖尿病は、生活習慣が大きく影響し、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンが効きにくくなったりするタイプです。
日本人の9割は、生活習慣などに起因する2型糖尿病であるとされています。
カテキンが糖尿病予防に役立つメカニズム
冒頭で述べたように、緑茶に豊富に含まれるカテキン、特にエピガロカテキンガレート(EGCG)は、糖尿病予防に有効な成分として注目されています。
カテキンが血糖値をコントロールするメカニズムは多岐にわたり、実にいろいろな作用を通して抗糖尿病作用をあらわすことがわかってきました。
1. 血糖値の上昇抑制
・α-グルコシダーゼ阻害作用:カテキンは、食事で摂取した糖質が分解されるのを遅らせる働きがあります。
α-グルコシダーゼという糖分解酵素の働きを邪魔することで、体内への糖質の吸収量を減少させ、血糖値が急上昇するのを防ぎます。
・インスリン分泌促進:肝臓で生成される悪玉タンパク質であるセレノプロテインP(SeP)の生成を抑制することで、インスリンの働きをサポートすると考えられています。
カテキンがSePの生成を抑制することで、インスリンの働きが円滑になり、血糖値の改善に繋がります。
2. インスリン抵抗性の改善
・細胞レベルでの作用:カテキンは、細胞がインスリンに対して敏感になるよう働きかけ、インスリン抵抗性を改善します。
インスリン抵抗性とは、インスリンが効きにくくなる状態のことで、これが原因で糖尿病の発症リスクは高まります。
・炎症抑制:カテキンには体内で発生する炎症反応に関わる様々な物質や酵素の働きを抑制する、抗炎症作用と呼ばれる作用があります。
この働きにより、慢性的な炎症が抑えられることで、インスリン抵抗性の改善に繋がると考えられています。
3. 脂質代謝の改善
・中性脂肪の減少:カテキンは、中性脂肪の合成を抑制し、分解を促進することで、血中の中性脂肪値を低下させます。
・コレステロール値の改善:カテキンは、悪玉コレステロールを減少させ、中性脂肪の吸収を抑える働きがあります。 さらに善玉コレステロールを増やす働きも期待されています。
実験結果とヒトでの研究
これらの効果については、数々の実証実験により検証が進められてきました。
まず、ブドウ糖を摂取する糖負荷試験では、ブドウ糖の摂取後一時的に血糖値は上昇しても、その後、カテキンが含まれるお茶を飲むことですぐに血糖値が下がったことが認められています。
動物実験では、カテキンを摂取したラットの血糖濃度も低下したそうです。
また、ヒトを対象とした研究では、1日6杯以上の緑茶摂取の人と週1杯未満の人とを比べると、前者のほうが2型糖尿病の発症リスクが顕著に少なかったという報告もあります。
もちろん、緑茶の飲用習慣以外にも普段の生活習慣や食生活が影響している可能性はあるにしても、これらの結果は、カテキンが血糖値をコントロールし、糖尿病の予防に役立つ可能性を示唆しているといえるでしょう。
毎日のお茶習慣で糖尿病予防
お茶を飲むと、茶葉に含まれるカテキンの成分が小腸から吸収され、血液中に流れ込みます。
しかし、体内に吸収される量はごくわずかです。カテキンは体内に元々存在しない成分のため、異物として扱われ、わずか3-4時間で体外に排出されてしまいます。
そのため、カテキンの効果を最大限に得るためには、毎日お茶を飲む習慣が大切です。
食事と一緒に緑茶を飲むと、カテキンが糖の吸収を妨げる働きをするため、食後の血糖値の上昇を抑えられます。
特に熱湯で淹れた煎茶は、カテキンを多く含んでいるため効果的です。
加えて、お茶を飲むことで、食事のペースがゆっくりになり、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
食事の際には、よく噛んでゆっくりと食べることや、家族と会話しながら食事をすることも、血糖値の安定に役立ちます。
このように、お茶を飲むことは、カテキンによる生理作用だけでなく、食事の習慣を変えることで、血糖値管理に役立つ生活習慣を身につけるきっかけとなります。
さいごに
いかがでしたか。カテキンが糖尿病予防に効果的であるという点がお分かりいただけたのではないでしょうか。
しかしながら、前述したように、カテキンは体内に長く留まることができず、数時間で排出されるため、その効果を最大限に得るためには、毎日お茶を習慣的に飲むことが大切です。
生活習慣も併せて見直すことで、カテキンによる作用と相乗効果を発揮し、より効果的に血糖値を管理することができます。