がん予防に緑茶!科学的に証明された驚きの効果
はじめに
日本人の死亡原因のトップは、残念ながらがんとなっています。
がんは、私たちの体の細胞の遺伝子が傷つき、その傷が修復されずに増殖することで起こる病気です。
生活環境の中には、様々な化学物質や紫外線、ウイルスや放射線などがあり、これらにはDNAを傷つける作用があります。
しかし、本来細胞には傷ついたDNAを修復する仕組みがあり、大抵の傷はすぐに元どおりに修復されます。
また、万が一修復に失敗した場合でも、その細胞を排除する機能が体には備わっているのです。
しかしながら、ごくまれに、修復し損なった細胞が、変異細胞として体の中に生き残ることがあります。
そこに、がんの成長を促進する物質が加わることで、異常な増殖をするようになります。傷ついた細胞を刺激し、がん細胞へと変えてしまうのです。
日本茶の成分ががんを予防するメカニズム
日本茶に含まれるカテキン類やビタミンA、C、Eといった成分は、がんが発生するまでの以下の二つのプロセスを阻害する働きがあると考えられています。
- 化学物質やウイルスなどが遺伝子に傷をつけ、ガン化の可能性を秘めた突然変異を引き起こすこと
- 発がん促進物質の作用により、細胞ががん化すること
1. 活性酸素と闘う:日本茶の抗酸化作用
まず、緑茶に豊富に含まれるビタミンA、C、Eは、体内で発生する活性酸素を無害化し、細胞の酸化を防ぐ働きがあります。
活性酸素は、遺伝子を傷つけたり、細胞を老化させたりするため、がんの原因の一つと考えられています。
2. がん細胞を攻撃するカテキン
次いで、カテキンには、がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させたりする効果が期待されています。
カテキンには、がん細胞の増殖に必要なシグナル伝達を阻害し、 がん細胞のDNA合成を阻害したりする効果があります。さらに、がん細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導する働きがあると考えられています。
3. アポトーシス誘導:がん細胞の自滅
アポトーシスとは、細胞が自ら死を選ぶ現象です。
アポトーシスが起こると、まず細胞の膜が変化し、風船のように膨らみ、その後、細胞の中にある遺伝子が細かく砕かれ、細胞全体がバラバラに分解されていきます。こうしてバラバラになった細胞の破片は、私たちの体を守る免疫細胞によって掃除されます。
緑茶に含まれるカテキンという成分は、このアポトーシスをがん細胞で起こさせる働きがあると考えられています。
つまり、カテキンはがん細胞に「自滅」を促すことで、がん細胞の数を減らし、がんの成長を抑える効果が期待されているのです。
研究で明らかになった可能性
動物実験においては、緑茶に含まれる成分が、がんの予防やその進行を抑制する効果が確認されており、そのメカニズムも徐々に解明されつつあります。
一方で、人間に対しても同様の効果が期待できるのかどうかを確かめるための研究が、現在も世界中で盛んに行われています。
緑茶の成分が持つ抗がん作用についても、更なる解明が期待されており、 将来的には、緑茶を飲むことが、がん予防の一つの手段として広く認められる日が来るかもしれません。
お茶の摂取量とガン
埼玉県立がんセンターの疫学調査の結果によると、緑茶を一日10杯以上飲む人は、心疾患だけでなく、がんによる死亡リスクも低いという興味深いデータが得られています。
特に、がんによる死亡年齢は、お茶をほとんど飲まない人に比べて、男性で約3歳、女性で約7歳も遅くなっていることが明らかになりました。
このことから、お茶の摂取量とがんの予防効果には、密接な関係があると考えられています。つまり、緑茶をたくさん飲むほど、がんになるリスクが低くなる可能性があるのでは?ということです。
先述したように、お茶に含まれるカテキンなどの成分が、がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させたりする働きがあるとされています。今回の調査結果は、緑茶の摂取が、がんの発症を抑制する効果があるという仮説を裏付けるデータであるといえるでしょう。
ただし、この調査結果は、そもそもお茶をたくさん飲む人は健康への意識が高く、お茶に限らず普段から健康的な生活習慣も送っている可能性があることを考慮する必要があります。
そのため、緑茶をたくさん飲むだけで必ずしもがんにならないというわけではありません。
とはいえ、そうした点を考慮しても、この調査結果は、緑茶が健康に良い飲み物であることを裏付ける貴重なデータと言えるでしょう。
茶生産地とガン
厚生労働省の人口動態統計によると、日本における緑茶の主要生産地である静岡県の住民は、全国平均と比較して、がんによる死亡率が非常に低いという結果が出ています。
この事実は、お茶の摂取とがんリスクの低さとの間に深い関連性があることを示唆しています。
動物実験においても、お茶の成分、特にカテキンが、胃や小腸など、様々な臓器における発がんを抑制する効果が報告されています。
カテキンは、がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させたりする働きを持つため、お茶を摂取することで、がんの発生が遅れ、がんにかかるリスクが減少する可能性が考えられています。
これらの結果から、お茶、特に緑茶に含まれるカテキンなどの成分が、がん予防に有効であるという見方が広まっています。
しかし、ヒトを対象とした大規模な研究はまだ十分ではなく、お茶の摂取量とがんリスクの関係については、さらなる研究が必要です。
ピロリ菌を除菌して胃を守る
ピロリ菌は、胃がんを引き起こす主な原因の一つとして知られています。
長年にわたるピロリ菌感染は、胃の炎症を慢性化させ、やがて胃がんへと発展する可能性を高めてしまいます。
従来、ピロリ菌の除菌には抗生物質が用いられてきましたが、薬の副作用や耐性菌の問題が懸念されていました。
そこで、緑茶に含まれるカテキンに着目した研究が行われました。
その結果、緑茶を10倍ほどに薄めて作ったカテキン溶液が、ピロリ菌の増殖を抑制する効果があることが明らかになったのです。これは、緑茶が持つ抗菌作用が、ピロリ菌に対して有効に働くことを示唆しています。
つまり、緑茶を日常的に飲むことで、ピロリ菌による胃炎や胃がんのリスクを減らすことができる可能性があるということです。
ただし、緑茶だけでピロリ菌を完全に根絶できるわけではありません。胃がんの予防には、定期的な健康診断を受けるなど、総合的な対策が重要です。
<参考>
国立研究開発法人 国立がん研究センター 『生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価』