海苔の作り方|私たちの食卓に並ぶまで
はじめに
サクッとした食感となめらかなくちどけの海苔。
いうまでもなく海苔は、日本の食卓に欠かせない食材の一つです。ご飯のお供やおにぎりの具材として、また、様々な料理に活用されています。
本記事では海苔を作る工程を解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
準備(3~9月)
- 糸状体の培養管理(海苔の胞子を作る):まずは海苔の種を作る作業からです。カキ殻やホタテ貝殻にフリー糸状体や果胞子を植付け、培養を開始します。春から夏にかけて成長し殻胞子を作ります。秋になると殻胞子が成熟し放出されます。
- 漁場の準備(海苔が育つ畑の準備):養殖方式には、主に内湾や沿岸部で行う支柱式と沖合で行う浮流式のふたつがあります。支柱式漁場では、支柱の設置等、浮流式では養殖施設の準備を行います。
種付け・採苗の準備(9月)
糸状体から放出された殻胞子をのり網に付着させる作業を採苗と言います。
- 海上採苗:のり網と糸状体が生長した貝殻を海上の施設に設置し、採苗する方法です。気象海況の影響を受けやすいため、現在は少なくなってきています。有明海の採苗は、海上採苗がほとんどです。殻胞子の付着が確認できたら、貝殻を取り外しそのまま育苗に入ります。
- 陸上採苗:陸上に水槽を設置しその中に糸状体が生長した貝殻を入れ、水車にのり網を巻いて行う方法です。殻胞子の付着数を調整しながら、計画的に採苗できます。現在はこの採苗方法が主流になってきています。殻胞子付着後、のり網を冷蔵庫で保存し海況が整えば海に張り出します。
育苗・生産期(10~11月)
種の付いたのり網を漁場に張り込み育苗を行います。健全なのり芽を育苗するために、干出※を行い、雑藻の付着を防ぎ、病害の無い芽を育て、二次芽による増芽も促します。
※潮の満ち引きを利用して海苔網を海水から空気中に干す、繰り返しの作業のこと。人工的に行う場合は人口干出という
育苗が終わった網は、そのまま養殖を行う網(秋芽網)と二期作を行うために冷凍保存する網(冷凍網)に分けられます。1 ヶ月程度で摘採できる大きさまで成長し、12 月以降は冷凍網を漁場へ張り出して、冷凍網の生産が行われます。
収穫(11~3月)
のり芽が15cm~20cmに育ったら収穫をします。昔は手作業で重労働でしたが、現在では機械でのり摘み作業が行われます。潜り船と呼ばれる海苔摘み取り専用の船を使い、海苔網の下を潜るように収穫を行います。
収穫された海苔は加工場にて、洗浄から乾燥まで、以下一連の流れをたどります。
加工場での流れ
1. 洗浄
収穫された海苔は、付着している砂や汚れなどを落とすために洗浄されます。真水で丁寧に洗い、異物を取り除きます。
2. 裁断
洗浄された海苔は、細かく裁断されます。一般的には、2~3mm程度の大きさに裁断されます。
3. 水切り
裁断された海苔は、水切り機を使用し再びて水分を除去されます。水分量が多すぎると、後の工程でうまく加工できないため、適切な水分量まで水切りを行います。
4. 抄き
水切りされた海苔は、抄き機と呼ばれる機械で全形一枚分の量に分けて「みす」の上にのせ、四角いのりの形にすきます。
5. 脱水
抄き上げられた海苔は、スポンジを使用した脱水機を使用してさらに水分を除去されます。すでに形が整えられた海苔の上を、スポンジが生海苔をおさえる事で、脱水されていきます。
6. 乾燥
その後、大型ののり製造機械(全自動のり乾燥機)で水分をとり温風にあてて乾燥させます。これにより、海苔の水分量を約10%まで減らします。
乾燥方法としては、天日乾燥、温風乾燥、熱風乾燥などがありますが、近年では温風乾燥や熱風乾燥が主流となっています。乾燥時間は、海苔の厚みや水分量によって異なりますが、一般的には数時間です。40~80℃の温度を保ちながら約2~3時間かけて乾し上げます。
7. 検査
ここまでの工程を終えた海苔は、各漁業協同組合に集められ、品質検査を受けます。検査内容は、色、形、香り、味、穴や破れの有無などです。金属探知機による異物チェックのほか、検査員の目視により等級(ランク)の設定を行います。
8. 入札
品質検査をクリアし、格付けがされた海苔はその後、その地域の組合が主催する入札会にかけられます。ここには多くの商社や加工会社が参加し、必要な海苔の品定めを行い、競争入札による買い付けが行われます。
9. 焼き
買い付けされた海苔は各加工メーカーにおいて、焼きや味付けなどの加工のほか、裁断や包装がなどされたのち、安全性をクリアしたものが、スーパーや小売店に出荷され、私たちの食卓に並びます。
まとめ
上記は、海苔の生産から収穫、加工までの一連の流れですが、工程によってはさらに細かい作業が加わることもあります。
このように、海苔加工には様々な工程があり、そのひとつひとつが海苔の風味や味を左右しています。随所に海苔の作り手の思いと長年培われた技が加わっています。
普段何気なく口にする海苔ですが、ぜひ作り手の思いとともに味わってみてください。