なぜお茶は緑色?緑茶の色が生まれるメカニズム
お茶の葉の緑色の秘密
お茶の生葉は緑色をしていますが、これは、光合成を行うために葉緑体の中に存在する「クロロフィル」という緑色の色素が大きく関わっています。
植物の葉が緑色に見えるのも、このクロロフィルが緑色の光を反射しているからです。
茶葉の酸化と緑色の変化
しかし、摘み取った茶葉をそのまま放置すると、葉の中に含まれる酵素の働きによって、このクロロフィルが酸化し、褐色の色素に変化してしまいます。
緑茶の製法とクロロフィルの保護
この酸化を抑制するために、緑茶の製法では、摘み取った茶葉を高温で加熱する「殺青」という工程が行われます。
お茶を作るときに生葉を蒸したり、釜で炒ったりして加熱することによって酸化酵素が失活し、酸化が止まります。
この「殺青」という作業により、出来上がったお茶には緑茶特有の緑色が残るのです。
お茶の種類によるクロロフィルの変化
とはいえ、その後の製造工程や保存方法によって、熱や光、空気といった影響を受け、酸化は徐々に進行し、クロロフィルの一部は酸化して褐色のフェオフィチンへと変化していきます。
そのため、出来上がったお茶は、鮮やかな緑色というよりは、ほんのりと褐色がかった色合いとなるのが一般的です。
クロロフィルがフェオフィチンに変化する割合は、お茶の種類によっても異なります。
例えば、玉露や上級煎茶の場合、約20~30%と変化の割合は低いですが、加熱時間が長い深蒸し煎茶では、約50%とより多くのクロロフィルがフェオフィチンに変化します。
保存方法とクロロフィルの酸化
また、購入後の保存方法も、お茶の色に大きな影響を与えます。
高温多湿の環境下や、密閉されていない容器での保管は、クロロフィルの酸化を促進し、お茶の色が褐色に変化する原因となります。
そのため、お茶の鮮やかな色と香りを長く楽しむためには、涼しく乾燥した場所で、密閉容器に入れて保存することが大切です。
紅茶や烏龍茶の色が異なる理由
ところで、同じ茶葉から作られる紅茶や烏龍茶は、緑茶とは異なり、濃い褐色をしています。
これは、紅茶や烏龍茶の製造過程において、緑茶のように最初に茶葉を高温で加熱して酵素の働きを止める「殺青」という工程を行わないためです。
そのため、茶葉の中の酵素が働き、酸化が進んで褐色の色素が生成されるのです。
お茶を放置すると茶色になる
お茶をいれてそのまま置いておくと、淹れたばかりの鮮やかな緑色から、黄色っぽくなったり、濃い褐色へと変化することがあります。
これは上で説明したように茶葉に含まれるクロロフィルが、空気中の酸素と結びついて褐色のフェオフィチンに変わるために起きる現象です。
さらに、苦みや渋みのもとであるカテキン類についても、時間の経過とともに酸素と結びついて、オレンジ色や赤色のテアフラビンなどに変化します。
最初は緑色だったお茶が、だんだん黄色っぽい色や茶色がかっていくのは、これらの物質の酸化の影響なのです。