冬の甘みを包み込む、深みのあるお茶
コース料理の最後に小さなエスプレッソが添えられるように、“食後のお茶” があることで、一皿の余韻はさらに広がります。家庭でつくれる身近な料理に合わせて、伝統あるお茶の魅力を再発見していただく企画。料理の背景や作り方の工夫、そしてその一杯が生み出す調和を、料理研究家の夏井景子さんと担当編集者の対話を通じて紐解いていきます。
ー 冬の果実・りんごが美味しい季節にぴったりの「りんごのキャラメルパウンド」。まずはレシピのポイントを教えてください。
夏井 りんごをバターでソテーしてから生地に混ぜ込み、さらに焦がしキャラメルのクリームを加えて焼いています。しっかりとした甘さの中に香ばしさとほろ苦さを感じられるケーキに仕上げています。季節のりんごを使うことで、冬らしい味わいを楽しめると思います。
ー 12月にぴったりの温かみのあるケーキですね。失敗しないためにどんな点に気をつけたら良いですか?
夏井 パウンドケーキを作るときは、卵を加えたときに生地が分離しやすいので、しっかり混ぜ込むのがポイントです。さらに粉を加えたあとにしっかり混ぜて艶を出してあげると、きめが細かく均一になり、焼き上がりもきれいになります。1つ1つの工程を丁寧に重ねることで、美味しく仕上がると思います。
ー このケーキに合わせていただいたのが、静岡の「かけがわ」。どんな理由で選ばれたのでしょうか?
夏井 キャラメルクリームを使っているので、ケーキ自体にしっかりした甘みと香ばしさがあります。そこにあまり軽いお茶を合わせてしまうと、ケーキの甘さの印象だけが残ってしまう。そこで、少し重みのある、渋みとコクを感じられる「かけがわ」を選びました。濃厚なキャラメルの甘さに負けず、しっかりとお茶の存在感を感じられる組み合わせです。
ー 実際に合わせてみると、お茶の渋みが甘さをうまく整えてくれましたね。
夏井 そうですね。「かけがわ」のほどよい渋みがキャラメルの甘さをまろやかに包み込んでくれて、全体のバランスがとても良くなります。飲みごたえがありながらも、渋みの中にまろやかさがあって、じんわりと余韻が残るのが魅力ですね。
ー 濃厚なキャラメルの甘さにもしっかり寄り添う力強さがありました。渋みと旨味のバランスがよく、飲むたびにケーキの香ばしさが引き立つように感じました。
夏井 はい。甘いものにしっかり寄り添えるお茶だと思います。「かけがわ」ならではの力強い渋みと深い香りが、スイーツの甘さをやさしく引き立ててくれます。価格も手頃で、毎日の暮らしに無理なく取り入れられるのも嬉しいところ。お菓子と一緒に楽しむ普段のお茶としても、贈り物としても、きっと喜ばれる一杯です。
焦がしキャラメルの香ばしさと、りんごのやさしい甘み。
そこに重なり合う、「かけがわ」の深い渋みと旨味。
冬の午後にぴったりの組み合わせが、甘い時間を上品に締めくくります。
“〆は、お茶で” その一杯が、心に静かな温もりを残してくれます。
今月のレシピ
りんごのキャラメルパウンド 21cm×8cm×6cmのパウンド型1本分
【材料】
・りんご 小1個
・無塩バター(120g)
・砂糖(120g)
・卵 2個
・薄力粉(130g)
・ベーキングパウダー 小さじ2/3
キャラメルソース
・砂糖(70g)
・生クリーム(70g)
お好みでホイップクリーム、シナモンパウダー
【つくり方】
[準備]
バターは常温に出して柔らかくしておく。卵も常温に出しておく。薄力粉とベーキングパウダーは合 わせてふるっておく。パウンドケーキの型にオーブンシートと敷いておく。オーブンを170度に予熱 しておく。
①キャラメルソースをつくる。生クリームを電子レンジに30秒ほどかけ温めておく。手鍋に砂糖(キャラメルソース用の70g)を入れ火にかける。しっかり焦げた茶色になったら生クリームを加え(沸き上がるので注意)ゴムベラで混ぜる。時々混ぜながらしっかり冷ます。
②りんごのソテーをつくる。りんごは十字に縦に4等分にし、皮を剥き、5mmの厚さに切る。フライ パンにバター10g(分量外)と砂糖大さじ1(分量外)を入れ、バターが溶けたらりんごを加えしんなりするまで炒める。粗熱をとる。
③ボウルにやわらかくしたバターを入れ泡立て器でクリーム状になるまで混ぜ、砂糖を加えて更に白っぽくなるまで混ぜる。
④溶きほぐした卵を4〜5回少しずつ加えてその都度よく混ぜ合わせる。
⑤キャラメルクリームを加えて混ぜる。混ざったらりんごを加えさっと混ぜる。
⑥薄力粉とベーキングパウダーを合わせてふり、⑤のボウルに加え、ゴムベラでさっくりとツヤが 出るまで混ぜ合わす。 5型に生地を流し入れて平らにならし、170度のオープンで45分ほど焼く。竹串を刺し生地がついてこなければ焼き上がり。型からはずし、しっかり冷ます。
⑦皿に盛り、好みでホイップクリームとシナモンをふる。