エスニックの余韻を整える、玄米茶のすっきりさ
コース料理の最後に小さなエスプレッソが添えられるように、“食後のお茶” があることで、一皿の余韻はさらに広がります。家庭でつくれる身近な料理に合わせて、伝統あるお茶の魅力を再発見していただく企画。料理の背景や作り方の工夫、そしてその一杯が生み出す調和を、料理研究家の夏井景子さんと担当編集者の対話を通じて紐解いていきます。
ー 今回は「めかじきのガパオ」をご紹介いただきました。レシピのポイントを教えてください。
夏井 タイ料理のガパオは鶏肉で作るのが一般的なんですが、今回は秋冬に旬を迎えるメカジキを使っています。お茶との相性を考えたときに、魚を使うことで少し “和” のニュアンスが加わると思って。メカジキは淡泊でクセがなく、オイスターソースやナンプラーなどエスニックな味付けともよく合う魚なんです。
ー なるほど。ガパオというと鶏肉のイメージですが、魚でも違和感がありませんでした。
夏井 メカジキは程よく弾力があって、しっとりした身質なので、エスニックな調味料ともバランスが取りやすいんです。豆板醤を少し加えて、味にピリッとしたアクセントをつけています。
ー 辛すぎず、程よい刺激で食べやすかったです。調理の際に気をつけるポイントはありますか?
夏井 野菜を炒めすぎないことですね。火を通しすぎると全体が柔らかくなりすぎてしまうので、少しシャキッとした食感を残すのが大事です。メカジキも火を入れすぎるとパサつくので、短時間でさっと炒めます。あとは、目玉焼きを多めの油で揚げ焼きにして、カリッと仕上げるのがポイントです。
ー 抹茶入りの玄米茶を合わせていただきました。その理由を教えてください。
夏井 ガパオの甘辛い味わいを、玄米茶がすっきり整えてくれるんです。玄米茶は渋みが少なく、香ばしさが特徴。そこに抹茶が加わることで、濃厚さと深みが増して、エスニックな料理ともバランスが取れるんです。
ー たしかに、玄米の香りがガパオライスのお米ともよく合っていました。
夏井 そうなんです。お茶の香ばしさとご飯の風味が重なって、すごく相性がいい。抹茶入りの玄米茶は、すっきりしているのにどこかコクがあるので、油を使った料理の後にもぴったりです。
ー 実際に合わせてみると、ガパオの風味と玄米の香ばしさが心地よく調和していました。食後にも飲みやすい軽やかさがありますね。
夏井 玄米茶の香ばしさが私も大好きなんです。渋みが少ないので、ごくごく飲めるのも魅力ですね。
ー まさに “日常で飲みたくなるお茶” という感じがしました。
夏井 そう思います。抹茶入りの玄米茶は、毎日の食卓にすっと馴染む味わいで、どんな料理にも自然に寄り添ってくれます。香ばしさの中に抹茶の深みが感じられて、食後に飲むと心がほっと落ち着くんです。もちろんギフトとしてもおすすめですし、来客時にお出しすれば、香りのよさや飲みやすさで会話が弾むと思います。
エスニックな香りと魚の旨味、そして香ばしい玄米の風味。
異国の味わいをすっと整える、抹茶入り玄米茶の一杯。
香ばしさのあとに広がる、静かな満ち足り。——
“〆は、お茶で” そのひとときが、食の余韻を深めます。
食後のお茶がもたらす静かな満足感 —— “〆は、お茶で” そのひとときが、日常を少し豊かにしてくれるでしょう。
今月のレシピ
めかじきのガパオ(2人分)
【材料】
・めかじき 2切れ
・赤パプリカ 1/2個
・玉ねぎ 1/4個
・バジル 10枚
・にんにく 1/2片
・豆板醤 小さじ1/4(鷹の爪1/2本でも代用可能)
・オイスターソース 大さじ1
・ナンプラー 大さじ2/3
・酒 大さじ1
・きび砂糖 小さじ1強
・サラダ油 適量
・ブラックペッパー 適量
・卵 2個
・ご飯 茶碗2杯分
【つくり方】
①にんにくはみじん切り、玉ねぎは繊維に沿って薄くスライス、パプリカは縦に5mm幅に切り、長さを半分にする。バジルはざく切りにする。
②フライパンに豆板醤、にんにくのみじん切り、サラダ油をしき火にかける。香りが出てきたらめかじきを入れて色が変わるまで強めの中火で炒める。色が全体的に変わったら玉ねぎとパプリカを入れて玉ねぎが軽くしんなりしたら、Aの調味料を入れる。味が絡まったら火を止め、バジルを加えてさっと混ぜる。
③お皿にごはんを盛り②を盛る。
④目玉焼きを多めの油で焼いて③にのせ、ブラックペッパーを振る。