玉露の旨味で広がる贅沢なひつまぶし体験
コース料理の最後に小さなエスプレッソが添えられるように、“食後のお茶” があることで、一皿の余韻はさらに広がります。家庭でつくれる身近な料理に合わせて、伝統あるお茶の魅力を再発見していただく企画。料理の背景やつくり方の工夫、そしてその一杯が生み出す調和を、料理研究家の夏井景子さんと担当編集者の対話を通じて紐解いていきます。

ー 今回はひつまぶしをご提案いただきました。調理のポイントを教えていただけますか?
夏井 うなぎの蒲焼きはスーパーなどで買えますので、手に入りやすいと思います。その際に、冷たいままうなぎをご飯にのせると、お茶をかけた時に全体が冷めてしまうんです。なので、必ず温め直してからご飯にのせてほしいですね。今回はフライパンで軽く焼き目をつけてから盛りつけました。

ー たれの香ばしさが際立って、ひつまぶしならではの贅沢感が増しますね。お茶をかけた時の “ふわっ”とほぐれる食感にもつながっている気がします。
夏井 そうですね。香ばしさが加わって、ぐっとおいしくなります。
ー 今回は飲む用としても、お茶漬けとしても「玉露 上喜撰」を合わせましたが、驚きましたね!
夏井 旨味がすごいですよね。「お茶ってこんなにおいしいんだ!」と素直に感じました。パッケージに記載されている淹れ方を忠実に再現したんですが、温度や茶葉の量を守る大切さを実感しました。玉露は50〜60度という低めのお湯で淹れるのが基本。普段の感覚だとつい熱湯を注いでしまうんですが、それでは旨味が活きないんですね。

ー 実際に飲んでみて、そしてひつまぶしにかけてみるとどうでしたか?
夏井 うなぎに負けてなかったですね。うなぎに負けない味って、かなり旨味がないとだめだと思うんです。でも、本当に出汁をかけたような旨味を感じるお茶で、料理としての相乗効果がある。普段のお茶漬けに物足りなさを感じるくらい、圧倒的な存在感でした。
ー 確かに、ひつまぶしって贅沢なうなぎにお茶をかけるのは、味が薄くなるだけでもったいないよなって思っていた節もあるんです。でも、この玉露は料理をさらに引き上げてくれる。お茶をかける意味をはっきりと感じたのはわたしも初めてです。

夏井 感動がありました。味が強いお茶なので、飲む用としてはごくごく飲むというよりは、少しずつしっかりお茶の旨味を味わってほしいお茶ですね。
ー 「玉露」という名前はみなさん聞いたことがあると思います。でも、それがどんなお茶かは知らないし、意識もされていないと思うんですよね。ペットボトルで玉露のお茶を飲んでいるけど、こんな感動はないじゃないですか。
夏井 恥ずかしながらわたしも玉露は高級品で、ハードルが高いイメージもあり今まで意識して飲んだことはありませんでした。煎茶をちょっと濃くしたものくらいのイメージしかなかったんです。お茶好きな方にはもちろん、これまで玉露を買ったことがない方にもぜひ試してほしいですね。わたし自身もそうでしたが、新しい扉が開けるような体験になると思います。人を招いた時に出せば会話も盛り上がりますし、“おもてなしのお茶”としても最適だと思います。
ー 確かに、これだけインパクトのあるお茶だから、食後の団欒も盛り上がりそうですよね。だからこそ贈り物にすると本当に特別感がありますね。
夏井 そうなんです。単なるギフトというより、“体験を贈る” お茶だと思います。

香ばしく焼いたうなぎをご飯にのせ、玉露をかけて味わう贅沢なひつまぶし。
出汁のような深い旨味を持つ「玉露 上喜撰」は、料理と響き合い、感動を呼び起こします。
“〆は、お茶で。” ——格別の一杯が、日常の食卓を特別な時間に変えてくれます。
今月のレシピ
ひつまぶし(2人分)

【材料】
・うなぎ蒲焼き 小さめ2尾
・ご飯 茶碗2杯分
・付属のたれ
・トッピング( 刻みのり、あられ、わさび、山椒)
・玉露のお茶

【つくり方】
①うなぎの蒲焼きは薄く油を敷いたフライパンで両面を焼き、1cm幅に切る。
②うつわにご飯を盛り、付属のたれを半分かける。うなぎをのせ、残り半分のたれをかける。わさびをのせる。刻みのり、あられ、山椒を別皿に盛る。 最初はそのまま、後半は玉露を加えながら食べる。