寺院と茶:仏事と深く結びつく日本の伝統
はじめに
寺院の垣根に緑葉を茂らせる茶の木は、単なる緑化植物ではありません。茶は仏教とともに日本に根付き、仏事の場においても欠かせないものとなっていきました。
今回は、仏事と深く関わりのあるお茶についてご紹介させていただきます。
留学僧や遣唐使とともに伝来したチャ
寺院の垣根には、実はチャノキが多く植えられています。
その背景には、深く根付いた歴史と文化的な意味合いが複合的に作用しているのです。
鎌倉時代に禅宗とともに日本に伝来した茶は、精神統一を促し、心を清めるための修行の道具として重用され、寺院を中心に広まっていきました。
その効能から、寺院の庭に茶の木を植えることは、仏教的な意味合いを持つ行為とされ、広く行われるようになったのです。
寺院の生垣にはチャノキが多い
一方、茶の木は、実用的な側面からも生垣として優れていました。
チャノキは低木かつ常緑樹であり、刈り込みにも強く、美しい緑の景観を一年を通して作り出すことができます。また、茶葉は虫を寄せ付けにくく、寺院を害虫から守る役割も果たしました。
このような理由から、寺院に植えられた茶の木の垣根は、俗世間と寺院を分かつ、つまり現世とあの世を分かつ境界線のように考えられたこともあったのです。
お茶は、寺院を中心に日本に広まり、人々の生活に深く根付いていきました。
お茶が仏事に使われる理由
出棺の際には、故人の冥福を祈り、お茶を棺に供えたり、茶葉を添える風習が見られる地域もあります。
仏事の返礼品としてお茶が選ばれるのは、長期保存が可能であったり、日常的に親しまれている身近な品であることに加え、古くから寺院とお茶が深く結びついてきたという歴史的な背景があるためと考えられます。
さいごに
このように、寺院と茶の深い結びつきは、単なる習慣ではなく、日本の歴史と文化が育んだ美しい伝統です。
いつでも、どこでも、手軽に緑茶を楽しめるようになった現代においても、その精神を受け継ぎ、仏事の場ではお茶を通して人と語らったり、故人に思いを馳せたり、残された家族のきずなを深める時間を過ごし、次世代へと繋いでいきたいものです。