贈り物に秘められた意味 贈答と付け届けの違いを解説
贈答とは、贈る行為に対して、お返しをするという義務が伴う、古くから続く日本の文化です。
お中元や結婚祝いなど、様々な場面で贈答が行われます。
江戸時代には、いつ、だれから、何の目的で、何を、どれだけ贈られたかなど贈答の記録を詳細に記した「義理控え」と呼ばれる書物が存在し、後日、自分が贈り物をするときに参考にしていたといいます。
これにより、贈答は社会的なつながりを維持し、人々の間で信頼関係を築く上で重要な役割を果たしていました。
一方、「付け届け」は、贈答のようにお返しを期待するものではなく、よりカジュアルで、ちょっとしたお礼の気持ちを伝えるための贈り物でした。
例えば、近所の人から野菜をいただいたお礼に、旅行のお土産をお渡しするといった行為がこれに当たります。
このように、贈答と付け届けは、同じ贈り物とはいえ、その性質や目的が明確に区別されていたのです。
しかし、現代では、贈答の形態が大きく変化しています。
特に企業間の贈答は、ビジネス上の関係性を維持するための手段として行われることが多く、お返しをするという義務が発生する贈答のような深い意味合いは薄れてきました。
また、贈答品の種類も多様化し、贈る相手や状況に合わせて自由に選ぶことができるようになりました。
このような変化の中で、贈答と付け届けの区別が曖昧になり、両者の概念が混同されるケースも増えていますが、それが良い悪いというわけではありません。
堅苦しい「贈答」を敬遠する、よりは、時代の変化に合わせてよりカジュアルに、物を贈りあう文化を細く長くとも続けていけたらと思うのです。
贈答にせよ付け届けにせよ、その根本にあるのは、贈る相手への感謝の気持ちにほかならないのではないでしょうか。