熨斗と水引の書き方完全ガイド!慶事・弔事シーン別使用方法も解説
はじめに
熨斗」についてきちんとご存じですか?
日本の文化である熨斗(のし)は、贈り物やお祝い事に欠かせないものです。熨斗のルールや使用方法を知ることで、贈り物をする際に失礼がないよう気を付けるようにしましょう。
そもそも「熨斗(のし)」とは?
熨斗について正確に理解している方は実は少ないのではないでしょうか。
「○○祝い」などの文字とともに、贈り物に巻いてある紙全般を「熨斗」として認識している方も多いかもしれませんが、熨斗とは正確には祝儀袋やのし紙などの右上にある飾りのことを指します。
あれ自体、見覚えはあるけど何なのかよくわからない、という方が多いかもしれませんが、熨斗はもともとは貝の鮑(あわび)なのです。
あわびを薄く切って乾かし、その後伸ばした「のしあわび」が起源であるといわれています。もとは熨斗鮑という生ものをつける文化でしたが、現代では簡略化され、印刷したものが使われるようになりました。
その昔、贈り物をする際は縁起物として干したあわび(熨斗あわび)を添える風習があったそうです。
秦の始皇帝や楊貴妃が、鮑を好んで食べていたという伝説もあるように、あわびは古くから不老長寿の妙薬として親しまれてきました。
日本でも織田信長をはじめとする多くの武将が、出陣前には必ずアワビを食べていたともいわれています。
このように、もともと縁起を担ぐ意味合いがある鮑ですが、熨斗鮑を作るときの「伸す」という行為が、大切な人の寿命や慶事における喜ばしさが末長く続くようにという意味合いが相まって、お祝い事のシンボルとして、現代でもお祝いの品や引き出物、祝賀品などに使われています。
熨斗とセットで見かける「水引(みずひき)」の種類と意味
前述した「熨斗」とセットでよく見かける紅白の飾りについては「水引(みずひき)」という別の名前があります。
水引とは、贈り物を包んだ封筒や紙にかける帯紐のことで、魔よけや未開封の証拠といった意味があります。
水引の結び方・色・本数によって使う場面が異なりますので、間違わないように気を付けましょう。
水引の結び方
水引の結び方にもいくつか種類がありますが、代表的なものは以下の3種類です。
蝶結び(花結び)
もっとも一般的な結び方です。ほどいても結びなおすことができることから、何度あっても嬉しいこととして出産祝いや入学祝、お中元お歳暮などのお祝い事や慶事全般に使われます。
結び切り
結び切りは、一度結ぶと解くことが難しいことから「一度きりで終わらせてくれますように」という思いや、「繰り返してほしくない」という思いを込めて、慶事の場合は結婚祝いや快気祝いなどに限定して使われるほか、弔事全般に用いられます。
鮑結び(あわじむすび/あわびむすび)
結び切りの一種で、その輪の部分が貝の「あわび」に似ていることから、その名が付いたと言われています。
結び切の中で最も固く結ばれておりほどきにくいことから、一度だけのお祝い事に使われます。また見た目の可愛らしさや、両端を引っ張るとさらに固く結ばれることから、結婚祝いで好んで選ばれることも多いです。使うシーンは結び切同様です。
水引の色
水引に使われる色は、それぞれ意味が異なります。特に金銭を包む場合は、包む金額によっても色が変わりますので、注意が必要です。
慶事の際
結婚祝や出産祝い、長寿祝いなど一般的なお祝い事の際は、紅白や金銀、赤金など、華やかな色を使います。
紅白は、お祝い事・おめでたいことなど慶事全般に使われる定番色です。慶事で色に悩んだら、赤白の水引を選べば間違いはありません。
一生に何度もないような新築祝いや還暦祝いといったお祝い、や、5万円以上の高額を包むお祝いであれば、金銀の水引を使ってご祝儀袋を華やかにしても良いでしょう。ちなみに紐が10本のものは婚礼用とされています。
弔事の際
弔事で一般的に使われるのが黒白の水引です。
特に黒白は香典袋の定番で、地域問わず使うことができます。黒白のほかにも、銀や青白、地域によっては暗めの黄色の水引も使われますが、葬儀の場合は黒白か双銀、法要の場合は宗教や地域によっても用いる水引の色が変わることがあるので注意が必要です。基本的には白黒の水引を選ぶと間違いがありません
香典袋の水引に関して言えば、色と作りによって包む金額が変わりますので尚のこと注意が必要です。
まず、印刷されているタイプの黒白または青白の水引は、5,000円前後の金額を包む場合に用いられます。印刷ではなくしっかり結ぶタイプの黒白の場合や黄白の場合は1〜3万円、双銀は3万円以上を包む際に使用されます。
水引の本数
水引の数についても決まりがあり、奇数が基本です。
基本的には5本を使用しますが、簡易的に3本が使われることもあれば、高額な贈り物をする際に7本を用いるケースもあります。ちなみに、9本は「苦」を連想させることから使用しません。
また慶事の中でも特におめでたいとされる婚礼関係においては、5本を倍にした10本の水引が選ばれます。
「のし紙」と「掛け紙」の違い
熨斗と水引が両方とも揃っている紙を「のし紙」と呼びます。
それに対して、熨斗や水引の有無にかかわらず、贈り物や金封に掛ける紙全般のことは「掛け紙」と呼ばれており、のし紙も掛け紙の一種です。
「のし紙」は祝い事のみに使われ、法事などの弔事においては、熨斗はなく水引だけが印刷された「掛け紙」が使われます。
贈り物ごとの、掛け紙の使用ルール
一般的な慶事・お祝い事
お中元、お歳暮など季節の挨拶でお礼を伝える際や、出産祝いや内祝いをお送りする際は熨斗+蝶結びの水引が印刷された「のし紙」を利用することが一般的です。
近年気にしない方も増えていますが、本来はカニやお肉など、生ものを贈る場合には、熨斗を使用しない「掛け紙」を使用するのがルールです。
以前と異なりのし紙にも種類やデザインが広がってきており、特に慶事の際に使われるのし紙にはポップなものや華やかなものなどそのバリエーションも増えてきています。
結婚祝いの場合は、金銀箔を施した高級感のあるものや、赤い鳳凰が描かれたものなど、華やかで格式のあるのし紙が人気があります。
一方、お中元やお歳暮などの季節の挨拶には、清楚でシンプルなデザインのものが使われることが多いです。
弔事
法要などの弔事では前述のように「のし紙」は使用せず、黒白もしくは双銀の5本結び切の水引のみ印刷された「掛け紙」を使うので気を付けましょう。
掛け紙には表書きと名前を
慶事弔事かかわらず、掛け紙には「御中元」や「出産祝い」「志」などといった名目(表書き)と、送り主の名前を書く必要があります。
名目は水引の上段中央に記入します。名入れに関しては、水引の下段中央に記入します。
これらは印刷であっても直筆であってもどちらでも問題はありません。もしご自身で書く場合は毛筆が望ましいとされていますが、準備がない場合でもボールペンは避け、筆ペンやサインペンで楷書で丁寧に記入するようにしましょう。
短冊熨斗は失礼?
のし紙には、贈答品の大部分を包む一般的なのし紙と、品物に貼り付ける小さい短冊のしがあります。
短冊のしは、サイズが小さいため簡易的な印象を受けますが、その意味合い自体に変わりはなく、お相手の失礼に当たることはありません。短冊熨斗を使用する際は、贈答品の中央ではなく、右上にテープや糊などで貼り付けて使用します。
内のしと外のしの違い
のし紙をかける位置によって、それぞれ「内のし」「外のし」と呼ばれます。
内のしとはその名の通り包装紙の内側に入れるのしで、外からは見えません。
一方、外のしは、一目で贈り主や贈り物の内容が分かるようにするためのしで、包装紙の外側に添えます。
内のしと外のしの使い分けについては地域によっても異なるため、正確な決まりはないのですが、一般的には、内のしについては内祝いや香典返しなど、控えめに送りたい場合に使用されます。とはいえ、近年は宅配便で贈答品を贈ることが多く、配送途中で傷がつかないようにという配慮から、内のしが選ばれることも多いです。
対して、結婚祝いや出産祝いなどの場合は贈られた方が一目でわかる外のしが使われます。
本来、内のしとは「ほんの気持ちなので」とでもいうべき日本人らしい謙虚さが反映されたものであることから、結婚祝いや出産祝いなどでは、、盛大にお祝いしたいという気持ちの表れともいえる外熨斗を使うことは適切であるといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたか。一言に熨斗といっても、長い歴史に培われた多くの意味合いがあります。
もしかしたら、なんだか堅苦しさを覚えた方もいらっしゃったかもしれませんが、贈る相手や贈るシーンに思いを馳せながら、日本の伝統文化である熨斗や水引のルールや使用方法を理解することも重要です。
熨斗の使い方を心得て、大切な贈り物をより意味深いものにしましょう。