内のし?外のし?熨斗の選び方と歴史を紐解く
はじめに
「内のし」と「外のし」は、贈答品に熨斗紙をかける位置によって区別されるものです。「内のし」は包装紙の内側に、「外のし」は包装紙の外側に熨斗紙をかける方法です。
熨斗のかけ方が二種類あるのは、古くはそのかけ方により格付けがあったためでした。お品の箱に直接かける「内のし」のほうを格上とされていた時代があったのです。
「内のし」の意味と特徴
「内のし」は贈り物の格を高く表し、贈る側の謙虚な気持ちを表すものと考えられていました。
包装紙とは本来、品物を傷めない、または外の穢れから品物を守るためになされるものという建付けなので、お相手にお渡しする時点で外すものでした。
事実、明治・大正時代の贈答作法を描いた絵には、贈り物の箱に直接熨斗がかかっていることがほとんどです。その品を風呂敷に包んで先方へ出向き、部屋に通されたら風呂敷を取り払って渡す、ということが上品で丁寧な送り方として一般的に行われていました。
「外のし」の意味と特徴
一方、「外のし」は贈り主や贈り物の中身が一目で分かり、包装紙によって品物の程度がそれとなく示唆されるため、贈り主の意図や贈るという行為をやや華やかに演出する役割を果たしていました。
特に、高級な品物を贈る場合や、贈り主の社会的な地位を示したい場合に「外のし」が用いられていました。一目で送り主はだれなのかが見て取れるとともに、高級な品を扱っている有名店で調達した、あるいは高級品を扱う有名デパートで調達したということが分かるのです。
同じ品を送るのであれば、一流デパートの良く知られた包装紙のほうが見栄えが良いわけです。わざわざその包装紙で包んだ商品を贈答することが、贈る側の気持ちや姿勢を表す一種のステイタスであった時代がありました。
時代の変化と熨斗の使い分け
しかし、現代では、贈答品の配送方法が変化し、相手の家に直接出向いて、贈答行為をするということも少なくなりました。配送途中で傷がつかないようにという配慮から、「内のし」を選ぶ人が増えています。
また、贈答品の選択肢も多様化し、包装紙のデザインも個性豊かになったため、かつてのように包装紙で贈り主や贈り物の内容を判断することは少なくなりました。
現代における熨斗の選び方
このように、「内のし」と「外のし」の使い分けは、時代の変化とともに変化してきました。
内のしと外のしの使い分けについては地域によっても異なるため、正確な決まりはないのですが、一般的には、内のしについては内祝いや香典返しなど、控えめに送りたい場合に使用されます。
対して、結婚祝いや出産祝いなどの場合は贈られた方が一目でわかる外のしが使われます。本来、内のしとは「ほんの気持ちなので」とでもいうべき日本人らしい謙虚さが反映されたものであることから、結婚祝いや出産祝いなどでは、盛大にお祝いしたいという気持ちの表れともいえる外熨斗を使うことは適切であるといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたか。内のし、外のし、どちらが良いのか、現代においては格付けも正解もありません。
そちらを選ぶかは贈る相手や贈る品物、そして贈る側の気持ちによって決めればよいのです。