初心者向け!緑茶の種類と選び方【全種類解説】
はじめに
煎茶、玉露、抹茶…、緑茶の種類は様々で、どれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。それぞれに特徴があり、味わいも異なります。
今回は、代表的な緑茶の種類とその特徴などを詳しく解説します。
1. 普通煎茶
新芽を蒸して揉み、乾燥したもの。
上級品ほどうまみや香りがあるもっともポピュラーな日本茶です。爽やかな香りに、渋みと旨みのバランスが取れています。
「普通」とは、摘採後の生葉の酵素を止めるための蒸し時間が標準(25-30秒程度)であることを意味しています。蒸した後はもみながら乾燥させて仕上げを行います。
現在日本で生産されているお茶の7割を占めているのが煎茶です。
かつては煎じて(煮出して)飲むお茶のことを「煎茶」と呼びましたが、江戸時代に日本独自の「青製煎茶製法」が確立されてからは、摘んだ茶葉を蒸した後、数段階にわたりもみながら乾燥させる製法で作られたお茶のことを指すようになりました。もむことで茶葉の組織が壊れてお茶の持つ成分が浸出しやすく、新鮮な色や香りを堪能することができます。
2. 深蒸し煎茶
深蒸し煎茶は、通常の煎茶よりもはるかに長い時間、茶葉を蒸して作られるお茶です。一般的な煎茶の蒸し時間が30~40秒程度であるのに対し、深蒸し煎茶は、その2倍から3倍、つまり1分~1分30秒ほどの時間をかけ、じっくりと蒸します。
この長時間蒸しの工程により、茶葉は非常に柔らかく、細かく砕けた状態になり、お茶の色は濃い緑色に、そして味わいは、苦みや渋みが少なく、まろやかでコクのあるものになります。
静岡県の牧野原周辺が深蒸し煎茶の発祥の地とされており、特に長時間蒸したものは「特蒸し茶」と呼ばれ、より濃厚な味わいが特徴です。深蒸し茶は、その独特の製法から、他の煎茶とは一線を画す、個性豊かなお茶として多くの人々に愛されています。
玉露
玉露は、限られた産地でしか栽培されない希少価値の高い日本茶です。一般的な煎茶と製法は似ていますが、茶摘み前の約20日間、茶園全体を覆って日光を遮る「被覆栽培」という特別な方法で育てられる点が大きく異なります。
この被覆栽培によって、茶葉は光合成を抑制され、アミノ酸が豊富になり、渋みが減ってうまみが凝縮されます。さらに、青のりや海藻のような独特の「覆い香」が生まれ、これが玉露ならではの上品な香りを醸し出します。日光を遮ることで、茶葉は柔らかく、旨味成分が損なわれることなく育ちます。
この特別な栽培方法により、玉露は通常の煎茶にはない、強い旨味と甘み、そして「覆い香」と呼ばれる芳醇な香りを楽しむことができます。日光を遮ることでうま味成分が渋み成分に代わるのを防ぎ、葉が柔らかくなります。
その上品な味わいは、日本茶の中でも特に高い評価を受けており、茶道や特別なシーンで飲まれることが多い高級茶として知られています。
蒸し製玉緑茶
蒸し製玉緑茶は、生葉を高温の蒸気で加熱殺菌する殺青工程を経た後、球状または半球状に丸めながら乾燥させる製法で作られる緑茶の一種です。別名グリ茶とも呼ばれ、釜炒り茶の釜で炒る工程を蒸す工程に置き換えた点が特徴です。
煎茶などが蒸した後にもみ込んで形を整えるのに対し、蒸し製玉緑茶は蒸した後、釜炒り茶と同様の加工を施すため、その形状から蒸しグリ茶とも呼ばれています。
釜炒り茶に比べて渋みが強く、静岡県や九州地方を中心に生産されています。
釜炒り製玉緑茶
釜炒り茶は、生葉を高温の釜で炒って酸化酵素を不活性化させることで作られる緑茶の一種です。蒸し製法の煎茶とは異なり、釜で炒ることで生まれる香ばしい「釜香」が特徴です。この香りは、生葉の酵素が釜で加熱される際に生み出されるもので、煎茶とはまた違った風味を楽しめます。
茶葉の形も独特で、煎茶のように形を整える工程がないため、勾玉型をしているのが特徴です。この製法は、中国茶に起源を持ち、日本には江戸時代に伝わりました。現在は、九州地方で多く生産されています。
釜炒り茶は、蒸し製法の煎茶に比べて、くせが少なくあっさりとした味わいが特徴です。カテキンも豊富に含まれており、健康にも良いとされています。
かぶせ茶
玉露と同じように茶の木に覆いをかけ、日光を遮ることで栽培されるお茶です。
しかし、玉露が20日間と長期間覆うのに対し、かぶせ茶は新芽が出た後、約1週間という短い期間だけ覆いをします。このため、玉露と煎茶の中間のような特徴を持ち、煎茶の爽やかな香りと渋みの中に、玉露のような旨みも感じられるのが特徴です。
栽培方法は、畝ごとに覆いをかけるのが一般的で、茶園全体を覆う玉露とは異なります。そのため、煎茶の栽培方法と共通点も多く、煎茶と同じように煎れて楽しむことができます。
かぶせ茶は、三重県が主な産地として知られており、西日本を中心に広く親しまれています。煎茶と玉露の両方の良いところを併せ持つ、奥深い味わいが魅力のお茶です。
碾茶
碾茶とは、抹茶の原料となるお茶です。玉露と同様に、茶葉に覆いをかけて育てることで、旨み成分を豊富に蓄え、柔らかく上品な味わいを引き出します。
最も特徴的なのは、製造工程において茶葉を揉まない点です。一般的な煎茶が茶葉を揉むことで形状を整えるのに対し、碾茶は蒸した後、そのまま乾燥させます。
このため、茶葉が粉末状になりやすく、抹茶に適した形状となります。揉まないことで、茶葉の細胞が壊れにくく、旨み成分や栄養素が損なわれにくいという利点もあります。
抹茶
揉まずに乾燥させた碾茶を石臼で丁寧に挽いて作られる微粉末のお茶です。主に茶の湯に使います。
茶葉を丸ごと粉末にするため、茶殻が出ず、ビタミンEや食物繊維など、栄養価の高い成分を余すところなく摂取できます。
口に含むと、強い苦みの中に、まろやかな甘みが感じられ、上品な旨みが広がります。茶筅で点てていただくことで、お茶本来の風味を最大限に引き出し、豊かな味わいを堪能できます。茶の湯をはじめ、お菓子作りや料理にも広く利用されており、日本文化を代表する飲み物として世界中で愛されています。
番茶
硬くなった新芽や茎などを原料とした茶で、製法は煎茶と同じ。
具体的には、新芽を摘み取った後の二番茶や三番茶、あるいは初冬や春先の茶畑の手入れで切り取られた葉や茎などが利用されます。また、煎茶の製造過程で選別された、大きく硬い葉も番茶の原料となることがあります。
番茶の定義は地域や産地によって様々で、一概にこうとは言い切れません。一般的には、一番茶や二番茶の後に収穫される秋茶を番茶と呼ぶこともあれば、煎茶の原料から選別された固い葉を番茶として販売することもあります。
番茶は、一番茶のような上品なうまみはありませんが、代わりにカテキンを豊富に含み、健康効果が期待できる点が特徴です。特に、摘む時期が遅くなるほどカテキン量が増加するため、健康志向の人々から人気を集めています。
ほうじ茶
ほうじ茶は、煎茶や茎茶といった緑茶を、強い火力でじっくりと炒り上げたお茶です。高温で炒ることで、緑茶特有の苦みや渋みが和らぎ、代わりに香ばしい香りが引き出されます。カフェインも大幅に減少するため、子供やカフェインが気になる方でも安心して飲むことができます。
また、胃に優しいのも特徴の一つです。その軽やかな風味は、食事の後や、就寝前のリラックスタイムにもぴったりです。特に、茎茶をブレンドすることで、まろやかな甘みが加わり、より飲みやすくなります。
玄米茶
玄米茶とは、煎茶や番茶といった緑茶に、焦げ色がつくまで炒った干飯を50%くらい混ぜ合わせたお茶です。名前の由来となった玄米ではなく、白米やもち米が使われることが一般的です。
ほうじ茶のような香ばしい香りが特徴で、日本茶の中でも親しみやすい味わいが魅力です。近年では、若者を中心に人気が高まり、高級な玉露を使った玄米茶も登場しています。
玄米とお茶の割合を調整することで、味の変化を楽しむこともでき、さっぱりとした中に広がる香ばしい風味が、日本だけでなく世界の人々からも愛されています。
茎茶
茎茶とは、煎茶や玉露などの茶葉を加工する際に取り除かれた茎の部分を原料としたお茶です。一般的に「棒茶」とも呼ばれ、白っぽい見た目が特徴です。
製造工程で取り除かれたお茶を「出物」と呼び、茎茶はその一種です。茎茶は、苦みや渋みが少なく、さっぱりとした味わいが特徴で、特に玉露の茎から作られる「雁が音」は高級品として知られています。茎茶には、茎以外の葉も混ざりますが、若々しい爽やかな香りが楽しめます。
麦茶
暑い日はもちろん、日常的な水分補給のお茶として多くの人に楽しまれている麦茶は、焙煎した大麦を煮出したり、水出ししたりして作られるお茶です。麦の香ばしい香りが特徴で、特に夏に多く飲まれます。
これは、大麦の収穫が初夏に行われ、新物の麦茶が最も美味しく飲める時期だからです。六条麦や二条麦など、様々な種類の大麦が使われますが、共通して言えるのは、カフェインやタンニンが含まれていないため、子供から大人まで安心して楽しめる点です。冬には温かくして飲むのもおすすめです。
芽茶
芽茶とは、茶葉の中でも特に若い芽や葉の先端を集めたお茶のことです。茶葉を加工する際に生じる細かい葉片を、丁寧に集めて作られます。
その成長途中の小さな芽の中には、通常の茶葉よりも多くの旨みが凝縮されており、濃厚な味わいと香りが楽しめます。よく丸まっているものほどは、まみが豊富で上級品とされています。
関西地方では、玉露から作られる芽茶を「尽」と呼び、珍重されています。芽茶は、煎茶や玉露を作る過程で生まれる副産物ですが、その深い味わいは多くの茶愛好家に愛されています。
紛茶
煎茶を作る際に生じる葉や茎の細かい破片を集めて作られるお茶のことです。茎茶や芽茶と同様に、お茶の製造過程で生まれる「出物」と呼ばれる種類のひとつです。製造工程で出るため、一般的な煎茶よりも手頃な価格で楽しむことができます。
急須に茶葉を入れ、お湯を注いでわずか10~20秒で、濃厚な味わいが引き出せる手軽さが特徴です。キリッとした苦みが特徴で、寿司屋で供される上り茶としても知られています。
また、ティーバッグのお茶の原料としても多く使用されています。さっぱりとした後味で、食事の邪魔をせず、幅広い料理に合わせやすいお茶です。