緑茶・紅茶・烏龍茶、その香りの秘密を解き明かす
お茶の香りの源:発酵の違い
緑茶と紅茶、ウーロン茶は、同じ茶葉を原料としているにも関わらず、それぞれ全く異なる香りを持っています。この違いはどこから生まれるのでしょうか。
それは、製法の違い、特に発酵の度合いが大きく関わっています。
お茶の葉は、摘み取られた瞬間から酸化が始まります。この酸化の度合いを調整することで、様々な種類のお茶が作られます。
緑茶:酸化を最小限に抑えた爽やかな香り
緑茶は生の茶葉を高温で蒸すことで、酵素の働きを止め、酸化を最小限に抑えたお茶です。
酸化を最小限に抑えるために、摘み取った生葉を短時間のうちに高温で蒸したり、釜で炒ったりするなどの「殺青」を行って、酵素が活性化するのを止めます。
これにより、生の茶葉の持つ青葉のような爽やかな香りがそのまま閉じ込められています。
青葉アルコールや、アミノ酸の一種であるテアニンなどが、緑茶の爽やかで上品な香りの主成分です。
一方、紅茶や烏龍茶は、生葉をすぐに加熱処理する緑茶とは異なり、まずは生葉を萎れさせます。こうすることで、酸化酵素や香気成分を生成する酵素が働き、色々な成分がつくられます。
紅茶と烏龍茶はそれぞれ特有の香りがあります。
紅茶:発酵による芳醇な香り
紅茶は、摘み取った茶葉を萎凋(いちょう)させてから酸化を促進させ、完全に発酵させたお茶です。
この発酵の過程で、茶葉に含まれる成分が複雑に変化して、紅茶特有の芳醇な香りが生まれます。フルーツのような甘い香りや、花の香りが特徴的なのは、この発酵によるものです。
紅茶の香りは、発酵の程度によって異なり、発酵が進むにつれてフルーティーな香りが強くなります。紅茶はバラの花や果物の香りがするものが良いとされます。
烏龍茶:緑茶と紅茶の中間、独特の香り
一方烏龍茶は、緑茶と紅茶の中間の発酵度を持つお茶で、半発酵茶と呼ばれますす。
緑茶のように蒸して酵素の働きを完全に止めずに、ある程度発酵させることで、緑茶の爽やかさと紅茶のようなコクを兼ね備えた独特の香りが生まれます。
烏龍茶の香りは、品種や製法によって多様ですが、一般的には、花のような香りや、ナッツのような香りが特徴です。烏龍茶は花のような香りが強いものほど上等といわれます。
発酵が香りに与える影響
では、なぜ発酵の度合いによって香りが異なるのでしょうか?
それは、発酵の過程で、茶葉に含まれる成分が複雑に変化するためです。発酵が進むにつれて、ポリフェノール類が酸化すると同時に、様々な香気成分が生成され、お茶の香りが変化していきます。
まとめ
紅茶や烏龍茶に比べると、日本緑茶は香りが弱く、香りよりも味を楽しむお茶といえるでしょう。
同じチャの仲間とはいえ、それぞれ個性の違う緑茶、紅茶、烏龍茶の特有の香りを大切に味わいたいものです。
※萎凋:摘み取った茶葉を風通しのよい場所などに放置し、葉を萎れさせること。