#03
落語「まんじゅうこわい」
皆さんはどんな時にお茶が飲みたくなりますか?
例えば読書の時間。ふいに登場したお茶の描写に、思わずごくりと唾を飲んだり。くつくつと炊かれるあんこを見ていると、熱いお茶が欲しくなったり。国内外の文学やエッセイ、映画や漫画、アート、音楽……。想像を膨らませ、思わずお茶が飲みたくなるとっておきの物語をお届けします。
落語といえばお茶にまつわる噺が数多くありますが、なかでも有名な一つが「まんじゅうこわい」。古典落語の演目の一つで、滑稽話の最高峰として親しまれ絵本や現代風にアレンジされたバリエーションも豊富にあり、落語ファンならずとも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ひまをもてあました長屋の若い衆が数名集まり、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言いあっている。「ヘビ」「クモ」「アリ」「幽霊」「コウモリ」「毛虫」と言い合う中に一人、「世の中に怖いものなどない」とうそぶく男がいる。散々啖呵を切った男だが、周りに詰め寄られると次第に様子が変わってきて、「実は…饅頭が怖い」と小声で白状する。
男は「饅頭の話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、隣の部屋で寝てしまう。残った若い衆は、「饅頭攻めにしてあいつを脅してやろう」と画策し、金を出し合い、饅頭をたくさん買い込んで、お盆に山盛りにして寝ている男の枕元へ運び込む。
目覚めた男はまんじゅうを見て声を上げ、ひどく狼狽してみせながらも、「こんな怖いものは食べてなくしてしまおう」「うますぎて、怖い」などと言ってまんじゅうを全部平らげてしまう。一部始終をのぞいて見ていた若い衆たちは、男にだまされていたことに気付く。怒った男たちが男をなじり、「お前の本当に怖いものはなんだ!」と聞くと、「このへんで、熱いお茶が1杯怖い」と答えて、噺は終わる。
古典落語らしい王道の長屋噺で、軽快な語り口で落語初心者でも楽しめます。実に美味しそうな饅頭の描写が特徴で、若い衆を騙した男でなくても、思わず最後に、「熱いお茶を1杯!」と言いたくなります。カラッと大笑いしながら、味わい深い煎茶はいかがでしょうか。
江戸時代の庶民にとって、お茶も落語も日常的な交流の場やおもてなしの心を表現する手段として親しまれていました。そして前座と呼ばれる若手噺家にとっては、師匠へのお茶出しが「間」や「思いやり」を学ぶ大切な修行だと言われています。お茶を通して、江戸の庶民文化に想いを馳せるのも一興です。
「まんじゅうこわい」
古典落語の演目の一つ。東京では若手が鍛錬のために演じるいわゆる「前座噺」のひとつとされるが、5代目柳家小さん、3代目桂三木助らは晩年まで得意ネタとして長く演じ、現在でも多くの噺家が演じている。
今回選んだお茶は…
深蒸 せんちゃ
静岡、鹿児島、宇治の各産地で採れた深蒸し茶を山本山独自の配合でブレンド。深蒸し製法で作られたお茶は水色が濃く、渋みの少ない味わいです。

