#02
大雪の茶会
高級茶として知られる玉露。日光を遮断する “被覆栽培” という手間のかかる特殊な栽培方法と熟練の製造によって生み出される深い旨味と甘みには、他の緑茶と一線を画す奥深い魅力があります。濃厚な旨味、とろりとした口当たり、そして覆い香と呼ばれる特有の香り。高級といわれる玉露だからこそ、まずは真摯に一杯と向き合ってみたい。菓子と茶をクリエーションする“茶菓の会” を主催するようさんによる季節の菓子と共に、五感を開放し、一期一会の光を味わう、玉露のあるひとときを感じてみませんか。
「冬の寒い日に暖かく、お茶の時間を楽しみたいと思い、クリスマスを想起させるような赤を基調としたしつらえにしました。中国茶をゆっくり楽しむ時間のように、凝縮された茶を味わうことのできる玉露も同じように楽しんでいただけると思い、今回は中国茶器を使って淹れます」と、ようさん。
下に敷いた布はモロッコ北部に位置する古都フェズに伝わる伝統的なフェズ刺繍が施されたアンティークで、表裏がなくリバーシブルに仕上がることが特徴です。手仕事ならではの優しい風合いが、温もりを感じさせる冬らしいティータイムを演出してくれます。
「今回使っているのは茶壺(ちゃふう)と呼ばれる中国茶の茶器で、日本の急須に当たるものです。玉露に限ったことではありませんが、お茶を美味しく淹れるコツは、茶器と茶葉のバランスです。180ccの茶器ならば茶葉は10g。90ccなら5gという具合に、茶器を基準に茶葉の量を調整すると分かりやすいと思います」
「何人で楽しむかにもよりますが、三人分くらいなら今回の90ccのサイズでも十分楽しめると思います」
庭に降る 雪は千重敷く しかのみに 思ひて君を 我が待たなくに
今回の冬の茶会に合わせてようさんが選んでくれたこの歌は、『万葉集』の編纂者として知られる奈良時代の歌人・大伴家持による一首です。
「庭に降る、雪は幾重にも幾重にも積もっていますが、私はこんな程度に思ってあなたを待ったのではありませんよ(もっともっと深く思っているのです)」と、庭に降り積もる雪に、恋心を重ねた歌です。
添えられた茶菓は、「雪の結晶」と名付けた砂糖をまぶした蓮根の砂糖漬けです。
「蓮根をスライスして蜜漬けし、グラニュー糖をかけて乾かす干菓子ですが、この砂糖漬けは蓮根の選び方がポイントです。新鮮な蓮根を使うと仕上がりが綺麗になります」
木々の葉もすっかり散り終えて、本格的に雪が降り出す時節を迎えます。砂糖をまとった蓮根に光が差すと、雪化粧のようにキラキラと輝きます。まるで地上に舞い降りた雪の結晶をいただくような、甘く繊細な干菓子が濃厚な玉露の味わいに優しく寄り添います。
「お茶を楽しむことは、時間を楽しむこと」とようさん。
忙しない師走に突入するこれからの季節だからこそ、温かな室内で火を灯しながら玉露をゆったり味わうひとときが一服の安らぎをもたらしてくれます。
茶器に残った茶葉の景色も違って見えて、普段のティータイムがより一層愛おしく感じられるのではないでしょうか。
今月選んだお茶は…
玉露「上喜撰」
うま味と甘みが程よいバランスの玉露です。まろやかさを残しつつ玉露ならではの香りが楽しめます。袋入のお茶を和紙の包み袋でお包みしておりますので、プチギフト、手土産、お返しなどにもお使いいただけます。

