冬のグラタンを、玉露で締めるという発見。
コース料理の最後に小さなエスプレッソが添えられるように、“食後のお茶” があることで、一皿の余韻はさらに広がります。家庭でつくれる身近な料理に合わせて、伝統あるお茶の魅力を再発見していただく企画。料理の背景や作り方の工夫、そしてその一杯が生み出す調和を、料理研究家の夏井景子さんと担当編集者の対話を通じて紐解いていきます。
ー 2月のメニューとしてご提案いただいた「鱈とふき味噌、じゃがいものグラタン」。やはり冬を意識した料理でしょうか?
夏井 そうですね。グラタンはやっぱり冬の料理というイメージがありますし、鱈もちょうど旬の魚です。鱈は淡白な味わいなので、乳製品を使った料理と相性がとてもいい。しかも、魚の中でも比較的リーズナブルなので、日常使いしやすいところも魅力ですね。私自身もよく使う魚です。
ー ホワイトソースとの相性もとても良かったです。
夏井 ホワイトソースには生クリームなど乳製品のコクがあるので、合わせる食材はさっぱりしている方がバランスがいいと思っています。淡白な鱈に、今回はふき味噌という少しパンチのある食材を合わせました。そうすることで、鱈のやさしい味わいがより引き立つんです。
ー 2月10日が「ふきのとうの日」ということもあって取り入れていただきましたが、良いアクセントになっていました。一緒に入っていたじゃがいもには、どんな役割があるのでしょうか?
夏井 じゃがいもは味が強すぎず、ホクホクしていてとろみのある野菜ですよね。今回は最初にじゃがいもを牛乳で煮て、乳製品の風味を含ませています。じゃがいも自体にとろみがあるので、ホワイトソースの一部の役割も担ってくれるんです。グラタンには定番の食材ですが、やっぱり相性は抜群ですね。
ー じゃがいもが入っていると食べ応えもありますよね。とても美味しかったです。調理のポイントを教えてください。
夏井 ホワイトソースは、かなりシンプルな作り方にしています。バターで炒めた玉ねぎに小麦粉を加え、そこに牛乳を少しずつ入れていく方法なので、失敗しにくいと思います。あとは、じゃがいもを牛乳で煮る工程ですね。ここで全体のまとまりがぐっと良くなります。
ー 今回はこのグラタンに、玉露「上喜撰」を合わせました。実際に合わせてみていかがでしたか?
夏井 グラタンは味がしっかりしていますよね。だからこそ、玉露の深みがとてもいい“お口直し”になると感じました。グラタンを食べたあとに玉露を飲むと、その深い旨味がより美味しく感じられる。相乗効果がある組み合わせだと思います。
ー 実際に試してみると、どちらかが勝つというより、玉露がグラタンの味わいを包み込んでいるような印象でした。玉露は香りも旨味も強いので、料理と合わせるとお茶の存在感が前に出ることも多いですが、このグラタンの場合は驚くほど調和していました。洋食と玉露がここまで合うのは意外な発見でした。
夏井 私もそう思います。玉露は和食に合わせるイメージが強いですが、洋食にも意外と合うんですよね。
ー 今回はホワイトソースでしたが、例えばデミグラスのような、コクのあるソースとも意外と相性が良さそうです。洋食と玉露の組み合わせって、もっと広がりがありそうですね。
夏井 そうですね。玉露は旨味がしっかりしているので、淡い味付けの料理だとお茶の存在感が前に出やすいんですけど、ホワイトソースやデミグラスのように“コク”や“厚み”のある味わいだと、玉露の旨味がきれいに寄り添ってくれると思います。料理の余韻を消すのではなく、旨味同士が重なっていく感じですね。それに玉露は、普段使いというより「ちょっと特別な時間に淹れるお茶」でもあるので、3月や4月の新生活の贈り物にとても向いていると思います。たとえば引っ越し祝いや就職祝い、環境が変わる方への“ひと息つける時間”のギフトとして、ぜひ選んでほしいお茶です。
とろりとしたホワイトソース、淡白な鱈の旨味、そしてほろ苦いふき味噌の余韻。
そこに重なる、玉露「上喜撰」の深く澄んだ旨味。
冬の洋食を静かに受け止める一杯が、食後の時間を上質に整えてくれます。
“〆は、お茶で。” その選択が、玉露の新しい楽しみ方を教えてくれるはずです。
今月のレシピ
鱈とふき味噌、じゃがいものグラタン(2〜3人分)
【材料】
・じゃがいも 3個(250g)
・鱈 2切れ
・玉ねぎ 1⁄2個
A (牛乳 150cc、塩 小さじ1⁄4)
・牛乳 200cc
・生クリーム 100cc
・バター 20g
・小麦粉 20g
・塩 小さじ1/8
・ふきみそ 大さじ1
・チーズ 30g
・ブラックペッパー 適量
【つくり方】
①じゃがいもは皮を剥き5mmのいちょう切りにする。玉ねぎはみじん切りにする。鱈は皮を剥き3〜4等分に切り塩胡椒をして出てきた水分をふく。牛乳は温めておく。
②小鍋にじゃがいもとAを入れ火にかける。沸いたら弱火にし、じゃがいもに火がとおるまで煮る。
③フライパンにバター10g (分量外) を入れ火にかけ①の鱈を焼く。表面に焼き色をつける(中まで火がとおってなくてOK)。バットに鱈を移し、ふき味噌とさっと和える。
④フライパンにバターを入れ火にかけバターが溶けたら玉ねぎを入れ炒める。玉ねぎがしんなりしたら小麦粉を加えてよく混ぜ、そこに牛乳を少しずつ加えてとろみを出す。下茹でしたじゃがいもを水分ごと加える。生クリームも加え混ぜる。塩で味をととのえる。
⑤耐熱皿に③のホワイトソースを1⁄3量のせる。その上に鱈をのせ、残りのホワイトソースをのせる。ミックスチーズを散らしブラックペッパーをふる。200℃のオーブンで15分ほどチーズに焼き色がつくまで焼く。

