スパイスカレーは煎茶でさっぱりと
コース料理の最後に小さなエスプレッソが添えられるように、“食後のお茶” があることで、一皿の余韻はさらに広がります。家庭でつくれる身近な料理に合わせて、伝統あるお茶の魅力を再発見していただく企画。料理の背景や作り方の工夫、そしてその一杯が生み出す調和を、料理研究家の夏井景子さんと担当編集者の対話を通じて紐解いていきます。

― 今回は鯖缶を使った「鯖のスパイスカレー」をご提案いただきました。この料理のポイントを教えていただけますか?
夏井 使うスパイスは最小限で、スーパーで手に入る身近なものばかり。鯖缶を使うので材料も揃えやすく、家庭で再現しやすいのが特徴です。さらに、梅干しを加えることで酸味が出て、鯖特有の臭みを抑えてくれる。トマトの酸味と合わさって、さっぱり食べやすい仕上がりになります。
― 確かにトマトのフレッシュ感がしっかり感じられました。一般的なスパイスカレーだと、トマトや玉ねぎをじっくり炒めて水分を飛ばしますが、今回のレシピは玉ねぎもしんなりする程度。軽やかで爽やかな印象です。

夏井 そうなんです。玉ねぎを飴色になるまで炒めてしまうとコクが出すぎて重くなってしまう。今回は「さっぱり食べられるカレー」がテーマなので、玉ねぎは具材感を残してさらっと火を通す程度にして、あえて軽やかに仕上げています。結果的に調理時間も短縮できて、家庭料理としてもつくりやすいと思います。
― 鷹の爪が入っていますが、チリパウダーではなくパプリカパウダーなので優しい辛さで、子どもでも食べられそうです。
夏井 鷹の爪を抜けば辛味はなくなるので、幅広い世代に楽しんでもらえると思います。辛くしたい場合はチリパウダーを加えてお好みの辛さでお楽しみください。

― 鯖特有の臭みも全く感じませんでした。梅干しやトマトが効いているんですね。
夏井 鯖缶の汁ごと使って旨味を引き出しつつ、トマトと梅干しの酸味で臭みを和らげています。鯖は栄養価も高く、タンパク質もしっかり摂れるので、日常の食卓にもぴったりですし、ヘルシー志向の方にもおすすめです。
― このカレーに合わせたのは「合組煎茶 山本山」。実際に召し上がってみていかがでしたか?

夏井 カレーはどうしても油を使うので、口の中に油っぽさが残ります。そこで煎茶をいただくと、すっとさっぱりさせてくれるんです。ほうじ茶だと香ばしさが残るのですが、この軽やかな煎茶はカレーとの相性が抜群だと思います。
― 確かに。普段はカレーと一緒に水を飲むことが多いですが、食後に冷たい煎茶をひと口含むと、爽快感と満足感がぐっと増しますね。爽快感がありながら、お茶の旨味の余韻も感じられる。カレーには“水よりお茶”が正解だと実感しました。
夏井 今日の合組煎茶は、ほんのりハーブのような香りも感じられて、スパイスとの相性も良かったですね。

― カレーは国民食と言われるほど、小さい子どもから年配の方までみんなが好きな料理。誰もが楽しむ料理に合わせやすいお茶という意味でも、カレーと相性の良いお茶は贈り物としても喜ばれそうです。
夏井 そうですね。若い方が祖父母に贈ってもきっと嬉ばれるでしょうし、パッケージも上品なので手土産にもぴったりです。お茶は日持ちがする点も贈り物として良いですね。
― 最近はスパイスからカレーを作る人も増えているので、そういう方へのギフトにもいいですね。スパイスとセットで贈るのも楽しそうです。
夏井 それは喜ばれそう! カレー屋さんに行っても、コーヒーやチャイはあるけどお茶はないですよね。これからは “カレーには日本茶” というスタイルがもっと浸透していくといいですね!

鯖缶と梅干し、トマトで軽やかに仕上げたスパイスカレーに、口の中をすっと整えてくれる「合組煎茶 山本山」。油やスパイスの余韻を心地よくリセットしながら、お茶の旨味がふわりと残ります。
カレーに水ではなくお茶を合わせる——それだけで、食卓が新鮮に、贈り物が一層特別に感じられるはずです。
“〆は、お茶で。” そのひとときが、日常を少し豊かにしてくれるでしょう。
今月のレシピ
鯖のスパイスカレー (4人分)

【材料】
・鯖缶 2缶
・玉ねぎ 2個
・にんにく 2片
・生姜 1片
・梅干し 小さじ2
※種を取って叩いたもの。塩分15%くらいのものがおすすめ。
・水 400cc
・トマト缶 (カット缶) 1缶
・塩 小さじ1/2〜
・米油 大さじ1
・A (コリアンダーパウダー 大さじ1、パプリカパウダー 小さじ1、ターメリックパウダー 小さじ1/2、マスタードシード 小さじ2 、鷹の爪(種を取り除く) 1本)

【つくり方】
①玉ねぎは半分に切り、繊維を断ち切るように薄くスライスする。にんにくと生姜は千切りにする。梅干しは種を取り除きたたく。
②鍋に米油と玉ねぎを入れ強火にかける。玉ねぎがしんなりしたら、にんにくと生姜を加え、香りが出てくるまで中火で炒める。
③Aを入れさっと炒め、水大さじ2(分量外)を入れなじませ、スパイスを炒める。
④梅干し、水、トマト缶を加え、さっと混ぜたら強火にし、沸いたら弱火にして蓋をして10分煮る。
⑤鯖缶の蓋を開け、フォークで崩し水分ごと鍋に加える。再び蓋をして5分煮たら火を止める。
⑥別の小さめのフライパンに、米油(分量外)大さじ1.5と、マスタードシードを入れ火にかける。パチパチとしてきたら鷹の爪を加え蓋をして弱火にする。パチパチが収まったら火をとめ⑤の鍋に入れ、混ぜる。
付け合わせ
【材料】
・じゃがいも
・ターメリックパウダー
・パクチー
【つくり方】
・じゃがいも1個は皮を剥きスライスして水から煮る。火が通ったらザルにあげ、フォークなどでしっかり潰す。別のフライパンに玉ねぎ 1/4個のスライスと生姜 1/3片のみじん切りと、にんにく 1/2片のみじん切りを入れ米油 小さじ2で炒め、玉ねぎがしんなりしたらじゃがいも、ターメリック少々、塩を加え混ぜる。
・パクチーはみじん切りにする。