本物の八女茶を味わう!産地と特徴を知ろう
はじめに
八女茶は、福岡県八女市を中心に生産される日本茶の一種です。その深いコクと甘み、そして豊かな香りが特徴で、日本国内のみならず、海外でも高い評価を得ています。
産地の八女市は、大分県や佐賀県にもほど近い、福岡県の南西部にあり、山間地では玉露が、平たん地では煎茶が生産されています。
今回は、八女茶の特徴と歴史について、詳しく解説していきます。
茶栽培に最高の八女の風土
八女茶の最大の特徴は、その濃厚な旨味とコクにあります。
これは昼夜の寒暖差が大きく、霧が発生しやすいという八女地方の風土が育んだものです。霧は、日光を遮ることで茶葉のうま味成分を増やし、上品な香りを引き出す効果があります。
また、筑後川や矢部川などの豊富な清流が育んだ肥沃な土壌も、八女茶の品質を支えています。幾度にもわたる川の氾濫が、長い年月をかけて育んできた土は、茶樹の生育に必要な栄養分を豊富に含んでいます。
伝統的な栽培方法
八女の山間部では、特に玉露の栽培が盛んです。玉露は被覆栽培によって作られることが知られていますが、全国的に寒冷紗(かんれいしゃ)を使った被覆が一般的になる中で、八女では伝統的なわらを編んだ菰(こも)で覆う方法が今もなお行われています。八女の玉露は、例年4月中旬ごろに、茶の木に覆いをして、4月下旬~五月下旬に摘採が行われます。
加えて、八女茶の茶樹は、「芽重型(がじゅうがた)」と呼ばれる栽培方法が中心です。
極力枝を切らないこの方法では、枝の本数が少ないことから、1本1本が太く、大きく厚い新芽が付きます。あえて新芽の数を減らし養分を凝縮させているので、旨味とコクが特に豊かです。朝霧のような爽やかさと玉露のような旨味を兼ね備えた煎茶に仕上がります。
また、八女茶の多くは、三番茶を摘まずに二番茶までで収穫を終えます。これにより、茶樹が十分に養分を蓄え、高品質な茶葉を育てることができるのです。栽培面積に対して、生産量が少ないのは、それが理由で、量より質を重視した栽培方法がとられています。
八女茶の歴史
八女茶の歴史は古く、1423年に周瑞禅師が明から持ち帰った種を、霊巌寺にまいたことがはじまりとされています。
八女地方の肥沃な土壌と、豊富な水源が、茶栽培に適していたことから、栽培面積は一気に広がり、江戸時代にはすでに茶の産地として知られていました。当時の八女茶は将軍家や大名家に献上されるなど、高級茶として扱われていたとされています。
明治時代以降は、鉄道の開通や製茶技術の進歩により、八女茶の生産が大きく発展。深蒸し製法の普及により、八女茶の品質向上に大きく貢献しました。
現代でも八女茶は日本を代表するお茶として、国内外で広く愛飲されており、全国茶品評会でも、優秀な成績を収め続けています。
深蒸し製法によって生まれた濃厚な旨味とコク
八女煎茶はこれまで普通煎茶でしたが、最近では関東でも八女ブランドの認知度が高まったこともあり、深蒸し茶へのシフトが見られます。茶葉を高温で蒸すことで、旨味成分が壊れにくくなり、渋みの少ない濃くまろやかなお茶になります。独特の香りと濃い甘みが味わい深いお茶です。
まとめ
うまみ、香りに優れ、茶葉は針のようにシュッとしていて細く、美しい形をしている八女茶。
江戸時代から続く伝統的な製法を守りながら、現代の技術も取り入れ、八女茶は世界に誇る日本茶へと成長しました。深い歴史と熟練の技が育んだ八女茶は、その上品な香りとまろやかな味わいで多くの人を魅了し続けています。