「鉄瓶」でお茶が美味しくなる。味に差が出る理由と気になるお手入れ方法
はじめに
先日メジャーリーガーの大谷翔平選手がSNSに投稿した南部鉄器。ご覧になった方もいるのではないでしょうか。
あまりに美しすぎて思わずインテリアかな?と思ってしまいそうですが、違います。
南部鉄器のやかんは「南部鉄瓶」と呼ばれ、お湯を沸かすときに使います。
鉄器ならではの重厚感や美しい色合いに加え、熱が均一に伝わりやすかったり、保温性に優れているなど、機能的な特長もあり、南部鉄瓶は、近年国内外を問わず人気が高まっています。
南部鉄瓶の基本
南部鉄瓶とは、岩手県盛岡市および奥州市周辺でつくられている伝統工芸品「南部鉄器」のやかんのこと。その名の通り、鋳鉄で作られた湯沸かしの器具です。
鉄瓶自体は日本古来の伝統工芸品であり、特に南部鉄瓶が有名ですが、そのほかにも、京都鉄瓶、江州鉄瓶など様々な種類があります。それぞれに特徴があり、形や模様も様々です。
鉄瓶は、江戸時代初期に茶道具として作られ始めたとされています。当時は、武家や茶人にとって高級品として珍重されていました。
鉄瓶で入れたお茶が美味しいといわれる理由
ところで、鉄瓶で沸かしたお湯でお茶を入れると美味しくなるといわれていますが、それはなぜなのでしょうか。主に以下3つの要因によるものです。
鉄瓶は、使い込むほど美味しくなるという声もあります。これは、鉄瓶の内側にサビが生じることで、微量なミネラルが溶け出しやすくなるためと考えられています。
1. カルキを抜いて水質が軟水になるから
鉄瓶で沸かした水は、まろやかで甘いといわれることが多いです。
これは、鉄瓶で沸かすことで、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル(カルキ)が、鉄瓶の内側の鉄分と反応し吸着されることで、水の不純物がろ過されるとともに、水質が軟水に変わるためです。
軟水でお茶を淹れると、苦味がまろやかになり、旨味が引き出されると言われています。
2. 微量の鉄分が溶け出すから
鉄瓶で沸かすと、微量の鉄分がお湯に溶け出します。
鉄分は、貧血予防や免疫力向上などの効果が期待できます。鉄肌の表面から溶け出す鉄イオンは体内への吸収率が高く、日常的に摂取することで自然に鉄分を補うことができます。
加えて、鉄瓶で沸かしたお湯は、アルカリ性に傾くと言われています。アルカリ性のお湯は、お茶の渋みを抑え、まろやかな味わいにしてくれます。3. 保温性が高い
鉄瓶は、厚みのある鋳鉄で作られているため、保温性が高いのが特徴です。
厚みのある南部鉄器はとくにたくさんの熱を蓄えるので、淹れたてのお湯を長時間温かく保つことができます。温度が下がりにくいので、外気に影響されてお湯に温度ムラができることもありません。
温かい状態を長くキープできるので、お茶の時間をゆっくり楽しめますね。
鉄瓶を使う際の注意点
鉄瓶はサビやすいという弱点があります。
そのため、使用後は中は拭かずに、余熱で水けを飛ばすようにします。また、時々油を塗ることで、サビを防ぐことができます。
鉄瓶で沸かしたお湯が赤っぽかったり、鉄臭い場合があります。その場合は、すでにサビが付いてしまっている証拠です。
鉄瓶のサビ取りをする際には煎茶を使いましょう。お茶に含まれているタンニンは錆取りをするのに効果的です。以下の手順で錆取りを実施してみてください。
煎茶を使ったサビ取り方法
- まず煎茶のティーバッグを入れて、水を鉄瓶の八分目程度まで入れて煮出します。
- 沸騰してから30分ほど火にかけたままにしておきましょう。鉄瓶の中の湯は、タンニンと錆びが反応することで黒くなってきます。
- そのままの状態で半日ほど放置します
- 鉄瓶を放置して半日たったら、再度お湯を沸かします。
- これらの手順をお湯が透明になるまで繰り返せば、完了です。
まとめ
このように、お手入れに手間がかかるという難点はあるものの、鉄瓶の使用は鉄分補給に効果があることに加え、通常の夜間や電気ポットで沸かすのに比べて、格段においしいお茶を楽しめると思います。
鉄瓶は、歴史、文化、実用性を兼ね備えた伝統工芸品です。毎日のお茶をより美味しく、そして豊かにしてくれるでしょう。