February 10, 2026

issue 03 立春の茶会

高級茶として知られる玉露。日光を遮断する「被覆栽培」という手間のかかる特殊な栽培方法と熟練の製造によって生み出される深い旨味と甘みには、他の緑茶と一線を画す奥深い魅力があります。濃厚な旨味、とろりとした口当たり、そして覆い香と呼ばれる特有の香り。高級といわれる玉露だからこそ、まずは真摯に一杯と向き合ってみたい。菓子と茶をクリエーションする「茶菓の会」を主催するようさんによる季節の菓子と共に、五感を開放し、一期一会の光を味わう、玉露のあるひとときを感じてみませんか。

photo Yumiko Miyahama edit&text Chisa Nishinoiri

今月選んだお茶は…玉露「天下一」濃厚な味で通好みの玉露です。凝縮されたうま味と甘みは、ひと口で違いがわかります。袋入のお茶を和紙の包み袋で、プチギフト、手土産、お返しなどにもお使いいただけます。

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奥山の 八峰の椿つばらかに 今日は暮さね ますらをのとも

寒さ極まる2月ですが、暦の上では立春を迎え旧暦では一年の始まりとされていました。寒さが残る時期に咲く椿は「冬を越す花」「春を告げる花」とされ、春の季語として親しまれています。

大伴家持が詠んだ上の一首には、「奧山の峰々に咲く椿のように、つばらかに心尽くして今日を暮してほしい」「今日は心ゆくまで楽しい1日を過ごしてください」という穏やかな意味が込められています。

この時期になると、そんな春を告げる和歌にぴったりの生菓子が和菓子屋さんにも並びます。

「2月頃の季節菓子として知られる椿餅は、平安時代の『源氏物語』にも登場する日本最古の餅菓子の一つと言われています。道明寺生地で作った俵形の餅でつぶ餡を包み、椿の葉ではさんだものです。一般的に椿の葉は食べませんので、今回の室礼には現代の工芸作家が創ったガラスの椿の葉を添えました」と、ようさん。

「立春の清らかさ」をイメージして、今回は白やガラスを基調とした装いが整いました。

真っ白な椿餅の上にちょこんと乗せられているのは、ガラス作家・田 聡美さんの作品です。実際の植物を型取りしたガラス作品が光を通すと、葉脈までがありありと浮かび上がり、まるで凍った氷が溶け出したような瑞々しささえ感じさせます。

今回選んだ玉露は、濃厚な味で通好みの「天下一」です。

「旨みも香りも凝縮された茶葉だからこそ、あえて蓋をせず、片口を使った淹れ方はいかがでしょうか?」と、今回は普段とはひとあじ違った提案をしてくれました。

「大きく口の開いた器の肌に沿わせるように、お湯をゆっくりと注ぎます。蓋をしない分、普段より少し熱めのお湯でもOKです。茶葉が浸るくらい湯を注いだら、葉が蒸らされていくのをじっくり待ちましょう」

次第に茶葉に湯が浸透し、ゆっくりと変化していく様を眺めながら待つのも楽しいひとときです。と同時に、夜明けの水面から霞が立ちこめるように、玉露の濃密な香りが広がってきます。

最後の一滴まで注いだ玉露を、まずは一服。その瞬間、まるで茶葉の出汁をいただいているような旨みと甘みが口のなかいっぱいに広がります。すかさず、椿餅をすっと一口。

道明寺と白小豆で作った粒あんがプチプチと口の中で弾み、奥に忍ばせたという柚子の甘みがなんと爽やかなことか! ようさんお手製の菓子にもまた、「立春の清らかさ」をイメージした演出が潜んでいます。

2月は旧正月ということで、今回はもう一品。楽しい干菓子の演出もご紹介します。

「これは辻占(つじうら)という、主に石川県でお正月に親しまれているおみくじが入った干菓子です。いわゆるフォーチュンクッキーのような縁起菓子で、3つ選んで中身の言葉で年運を占うのが伝統のようです。主宰している『茶菓の会』でもこの季節にお出ししていますが、『左隣の人におすすめの旅先を教えてもらう』『満月の日の日没に東京タワーに登る』というように、お正月気分で楽しみながら、会話のきっかけになるような言葉を潜ませています」

片口に広がる美味しい香りを傍に、歌会始のような気分で楽しい会話とお茶を楽しんでみてはいかがでしょうか。

今月選んだお茶は…玉露「天下一」濃厚な味で通好みの玉露です。凝縮されたうま味と甘みは、ひと口で違いがわかります。袋入のお茶を和紙の包み袋で、プチギフト、手土産、お返しなどにもお使いいただけます。

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