September 8, 2025

issue 01 白露の茶会

高級茶として知られる玉露。日光を遮断する「被覆栽培」という手間のかかる特殊な栽培方法と熟練の製造によって生み出される深い旨味と甘みには、他の緑茶と一線を画す奥深い魅力があります。濃厚な旨味、とろりとした口当たり、そして覆い香と呼ばれる特有の香り。高級といわれる玉露だからこそ、まずは真摯に一杯と向き合ってみたい。菓子と茶をクリエーションする「茶菓の会」を主催するようさんによる季節の菓子と共に、五感を開放し、一期一会の光を味わう、玉露のあるひとときを感じてみませんか。

photo Yumiko Miyahama edit&text Chisa Nishinoiri

今月の選んだお茶は・・・玉露「上喜撰」うま味と甘みが程よいバランスの玉露です。まろやかさを残しつつ玉露ならではの香りが楽しめます。袋入のお茶を和紙の包み袋でお包みしておりますので、プチギフト、手土産、お返しなどにもお使いいただけます。

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「いろいろなお茶があるなかで、玉露は露一滴のマクロな世界を楽しんでいただけるものだと思います。入れる量が少量だったり、一杯の中に凝縮された味わいが濃厚だからこそ、そこに向かう視線や世界は一瞬キュッと狭くなります。その世界をいかに広く、豊に感じてもらえるかを念頭にお茶と向き合っています。そのために、今日は玉露に合わせて、時空を感じていただけるような菓子としつらいを考えました」

そう話してくれたのは、「彗星菓子手製所」を主宰するようさん。彼女のおもてなしの極意は道具選びや見立て、丁寧な所作の一つ一つに宿り、お茶と戯れるような粋な遊び心にも彩られています。

「今回はそういった玉露のミニマムな世界観を演出するために、“おままごと”のような見立てにしてみました」そう言って手にしたのは、金工師の鎌田奈穂さんによるアルミの小箱。蓋を開くと、まるでおままごと道具のように小さな茶道具たちがちんまりと収められています。

  • 1.茶道具選びの一つ一つに、亭主のもてなしの心が現れている。

  • 2.茶葉の目安は三人分で10g、湯量は180ml。

  • 3.沸騰させたお湯を湯冷ましに入れ約50〜60℃前後に冷まし、茶葉にゆっくりと注ぎます。

  • 4.蓋をして約2〜3分じっくり待ちます。

  • 5.片口に注ぎ、最も美味しい最後の一滴まで入れます。

  • 6.茶杯に少量ずつ注ぎ分けます。

玉露と聞くと、茶葉の量や湯の温度、時間など作法通りに淹れなくてはと、つい身構えてしまいがちです。でも、まずは気負わずに、とようさんは言います。

「茶葉のポテンシャルを知るという意味でも、私はいろいろな淹れ方を試してみます。ゆっくりと蒸らして淹れるお茶、あえてスピーディーに落としたり、水出しにしてみたり。50〜60℃というセオリーはあると思いますが、あえて高めのお湯にしてみたり。玉露に限らず、そのお茶をどう淹れたら美味しくなるのか、自分の好みを知ることも楽しいと思います。茶会となると、菓子との組み合わせでさらに世界は広がりますし。私はそうやって淹れるお茶や茶葉の個性を知ることがとても楽しいです」

ようさんが普段主催している茶会では、時節や和歌になぞらえながら季節を封じ込めたような美しい茶菓と共にお茶を楽しむことができます。今回は9月のはじまりと玉露「上喜撰」に合わせて、オリジナルの和菓子を製作してくれました。

夕月夜 心もしのに 白露の 置くこの庭に こほろぎ鳴くも

この歌は万葉集に収められている一首で、奈良時代の歌人・湯原王が詠んだものです。「夕月が照る夜に、心もしなえるほどに白露がおりているこの庭に、こおろぎが鳴いています」という情景を詠い、夏から秋への季節の変わり目を感じさせます。ようさんはこの一首から着想を得て、この日の茶菓を「白露」と名付けました。
茶箱この中に生けられていた草を小さな皿に置一き、その葉にそっと菓子の露。

寒天を煮て溶かし、砂糖と果汁を加えて固めた錦玉羹と、月に見立てた小さな栗餡。

まるで月夜に照らされる草露のように静かな光を宿し、自然の中でひっそりと移り変わる季節の美しさを感じさせてくれます。

「白露(はくろ)」とは二十四節気のひとつで、現在の暦では9/8~9/22頃にあたります。「夜中に大気が冷え、草花や木に朝露が宿りはじめる頃」で、朝の光に白く輝く露のことを、古の人は「白露」と表現しました。また、「玉露」も本来、露を美しい玉に見立てた言葉だと言います。

「まずは甘くふくよかな淹れたての香りを感じ、濃厚な玉露の茶葉の味わいと向き合い、菓子を楽しむ。『あ、この香りは去年旅先で嗅いだことがあるな』とか、『懐かしいおばあちゃんとの時間を思い出す』とか。一杯のお茶が、皆さんそれぞれの時空に飛べるスイッチになったらいいなと思っています。そんなふうに、心を汲んでお茶を入れるのが何よりも楽しいです」

朝露に濡れた草木のような濃厚な味わいの一煎目から、二煎、三煎と淹れ進むうちに、茶葉の輪郭がくっきり表れ、さっぱりと軽やかに変化していく味わいは実に表情豊かです。お茶と菓子を囲んでいると次第におしゃべりにも花が咲き、時間の経過とともにお茶の味わいも変化する。そろそろ喉を潤いたいなと思ったところに、スッと軽やかな一杯が差し出される。お茶とは本来、そうやって楽しむものかもしれません。

今月の選んだお茶は・・・玉露「上喜撰」うま味と甘みが程よいバランスの玉露です。まろやかさを残しつつ玉露ならではの香りが楽しめます。袋入のお茶を和紙の包み袋でお包みしておりますので、プチギフト、手土産、お返しなどにもお使いいただけます。

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