#04
十八代目 中村 勘三郎さんに贈りたい
< 毘沙門せんべい 福屋>の勘三郎せんべい×「ほうじ茶」
贈り物には、相手のことを想いながら、好みや用途、ちょっとしたサプライズを想像しながら選ぶ楽しさがある。たとえばお茶。贈答品の定番に菓子や小物などのプラスαを添えるだけで、あなただけの特別なギフトに。フードスタイリストの西﨑弥沙さんが、歴史上のあの人や、尊敬するあの人物への贈りものを時空を超えて勝手にプレゼンテーション。贈りものとしてのお茶の新たな魅力のご提案として、ギフト選びのヒントにいかがでしょうか。
歌舞伎ファンならずとも、その名を知らぬ者はいない十八代目 中村勘三郎さん。歌舞伎役者として幅広いジャンルの役柄に挑み続け、現代劇にも積極的に出演。テレビ、ドラマ、映画と幅広く活躍した。さらにコクーン歌舞伎や平成中村座を立ち上げるなど常に進取の精神を持ち続け、歌舞伎のすそ野を広げるプロデュース力にも長けた人物でもあった。
子役の頃から類まれな才能を発揮し、生涯、稀代の役者であり続けた・十八代目 中村勘三郎さんは言わずと知れた名門「中村屋」の一門。そんな中村屋は、代々名優を輩出し、家族仲が良いことでも知られている。亡き十八代目中村勘三郎さんへの尊敬と親しみを込めて、家族団欒のお供に先代の思い出のお菓子を贈りたい。
そこで西﨑さんが選んだのは、父から子へ味を受け継ぐ神楽坂の老舗< 毘沙門せんべい 福屋>。ここに、その名もズバリ「勘三郎せんべい」と名を冠した隠れた名物がある。
父である17代目中村勘三郎丈さんの注文から生まれた逸品で、焦げの香ばしさが特徴。神楽坂は花街であり花柳界とも縁が深いことから、勘三郎丈さんも福屋を訪れることが多かったそう。
「ご本人が焼き場につきっきりになって、『もっと焼け、もっと焦がすんだ』と言う注文に店主が応えて焼き込んだのが始まりだそうです。好みのせんべいをいつ来てもすぐにお出しできるようにと、大きな地球瓶に入れて置いていたところ、それが欲しいと他のお客様も目をつけて人気となり、ご本人の了承を得て『勘三郎せんべい』と名付けたそうです」
現在店頭に並んでいるものは、焼き具合に調整を加えた改良バージョン。予約をすればオリジナルの“濃い〜焦げ”(本当に濃い!)の用意も可能とのことで、一度食べるとファンになる人も多いそう。
しっかり焦げ目のついたせんべいは、ザクザクッと小気味良い歯ごたえ。確かに香ばしいコゲの味の奥から、噛めば噛むほどうるち米の旨みと甘みが滲み出てくる。これが名優の愛した味かぁと、思いを馳せながら、遠赤外線でじっくり焙煎した山本山のほうじ茶を流し込む。
芯まで焼き上げることで渋みが抑えられ、味わい濃く、香り高く仕上げられたほうじ茶。同じロースト系の両者が合わないわけがない。口の中に残る甘い茶葉の余韻に誘われて、もう1枚と、“焦げせんべい”に手が伸びる。ちなみに、オリジナルの“濃い焦げ”に、クリームチーズをのせて食べると、お酒のあてにも良いとか。
「この先代の味は、きっと中村屋一門でも愛されていたのではないでしょうか。華やかなイメージの梨園ですが、時には家族水入らず、自宅で和やかにお茶を楽しむ時間もあっただろうか。もしかしたら中村家のちゃぶ台には、この“焦げせんべい”が詰まった菓子鉢が常備されていたかしら。思い出の味をお茶請けに、時には思いで話にも花が咲いただろうか……。そんな家族団欒の妄想が広がります」
「型があるから型破り、型がなければただの”型なし”」そんな勘三郎さんの名言を噛み締めながら、親から子、そして孫へと受け継がれる芸と味の贈り物はいかがでしょうか。
勘三郎せんべい」(10枚入り)1,512円/毘沙門せんべい 福屋/問い合わせ03-3269-2983
今回贈り物に選んだお茶は…
「箱入り ほうじ茶」
宇治茶を中心にブレンドし、葉と芯それぞれに合わせて遠赤外線でじっくり焙煎。芯まで焼き上げることで渋みが抑えられ、香り高く味の濃いほうじ茶に仕上げています。